大麻で少子化対策 !? ホリエモンの “大麻合法化“ を考える

2020.06.19 | 国内動向 | by greenzonejapan
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大麻で少子化対策 !? ホリエモンの “大麻合法化“ を考える
2020.06.19 | 国内動向 | by greenzonejapan

1. 堀江氏の立候補と主張

スウェーデンの国家予算に匹敵する予算規模を有する東京都の首長を決める都知事選は、何かを訴えたい候補者にとって最も“コスパ”の高い選挙としても知られています。
今回は”ホリエモン“こと、堀江貴文氏の立候補宣言が注目を集めました。(結局出馬には至りませんでした。)

彼は自身の政策提言を「東京改造計画」と題し、幻冬舎から出版していますが、この中の 37項目の政策提言中、20番目に「大麻解禁」が掲げられています。

 

 

大麻については4ページが割かれ、その中で

・大麻の作用でセックスが気持ちよくなる(らしい)
・大麻を合法化することで少子化対策になるのではないか
・ダメ絶対で思考停止することなく、ゼロベースで考えるべき

といった内容が述べられていました。

2. 大麻はセックスの質を高めるか?

大麻が性生活を豊かにするというのは、インドのアーユルヴェーダ医学を筆頭に、古来より豊富な使用経験に裏打ちされており、欧米では広く知られています。

スタンフォード大学の調査では、大麻使用者はそうでない人に比べて、20%セックスの回数が多いと報告されています。また回数だけでなく、1979年の 84名の大学院生へのアンケート調査では、大麻が性交渉の際の満足度を高めるという結果が報告されています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/1097-4679(197901)35:1%3C212::AID-JCLP2270350135%3E3.0.CO;2-K

この恩恵に浴するのは男性だけではありません。2019年の 373名の女性を対象とした調査では、半数以上が大麻の使用で性欲が高まり、良いオーガズムを得られると答えています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2050116119300091

クリーブランドクリニックの調査では、アメリカ人女性の 43%、男性の 31%が何らかの性機能障害を抱えているそうです。性交渉を滞りなく行えるのが、本来の健康な状態であるとすれば、このような目的での大麻の使用も医療の一部と言えるでしょう。(なお、これはあくまでも大麻が有する一面であり、堀江氏の大麻がセックスドラッグであるかのような表現は誤解を招くものであることを指摘しておきたいと思います。)
https://www.projectcbd.org/wellness/sex-cannabis

3. 大麻合法化は出生率の向上につながるか?

次に、大麻の合法化が出生率の上昇につながるかを検討したいと思います。

コネチカット大学の経済学研究者、ミシェル・バギオとデイヴィット・サイモンによる調査では、大麻を合法化した州では、生殖可能年齢女性10,000人あたり4件/年の出生増加が認められたそうです。
https://today.uconn.edu/2019/01/states-legalize-medical-marijuana-also-see-higher-birth-rates/

仮に同じ数字を日本の人口に当てはめるなら、20〜40歳の女性人口がおよそ 1,500万人として、年間に6,000件の出生増加が見込まれる計算になります。

一方、2018年に大麻を合法化したカナダでの出生率は、合法化の前後も一定して低下し続けており、明らかな変化はありません。

子供を産むかどうかというのは複合的な判断であり、セックスが増えれば子供が増えるという単純なものではないでしょう。重要なのは安心して子育てができる社会制度の構築であり、大麻の合法化は少子化対策の一助にはなり得るとしても、決定的な要素ではないように思われます。

4. どのような合法化が望ましいのか?

主要候補と目される人物が、意図はどうあれ、大麻合法化を政策の一部に掲げるようになったというのは進歩であることは間違いないでしょう。しかし、著作を読む限り現時点では政策のレベルまでは落とし込まれてはいないようです。具体的にどのような合法化の形を取るかには、様々なバリエーションが存在します。

カナダでは合法化に伴い従来の小売業や活動家が締め出され、大資本が大麻利権を囲い込むような状況になっています。全面解禁が時間の問題となっているアメリカにおいても、そのような事態が危惧されているようです。民主党大統領候補として、大麻の解禁を訴えたバーニー・サンダース上院議員は、合法化に際して、大麻から得られる利益は、これまで薬物規制で虐げられてきた人々に還元することを約束しました。

同じく大麻の合法化を進めるタイは、大塚製薬などの外資企業の大麻に関する特許申請を拒否し、各家庭に栽培を許可し、個人が栽培した大麻を政府が買い上げる道を模索しています。
https://www.forbes.com/sites/sarabrittanysomerset/2019/11/17/thailand-will-allow-its-citizens-to-grow-cannabis-at-home-to-sell-to-the-government/#49bf8490591e

これは大麻の民主化とでも言うべき政策で、Amazon などの大手企業が流通を独占する未来とは異なる合法化の形です。

堀江氏が描く大麻合法化とは、カナダとタイ、どちらの形に近いのでしょうか? 日本でも具体的な政策案を考える時期がやってきたと言えるのかもしれません。

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)

 

 

 

 

 

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