女性はCBD Vapeでキマる? CBD Vapeに関する最新研究を解説します

CBD についての学術研究は増加の一途を辿り、2020年 7月 1日時点で Pubmed 上には 3,147本の論文が登録されていますが、人に対する研究のほとんどは経口オイルを用いています。実際には、オイル以外に電子タバコのように気化吸入するタイプの製品(Vape)も広く流通しています。この Vape による摂取と経口オイルとは人体内でのふるまいや影響が異なるのではないかという説は以前から提唱されています。実際に、CBD Vapeには軽い精神作用を感じるという意見も耳にします。

経口摂取と気化吸入にはどのような違いがあるのか? この疑問に取り組んだのは世界屈指の名門、ジョンズホプキンス大学の研究チームでした。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32247649/

 

2020年に Drug and Alcohol Dependence 誌に掲載された「大麻非常用者における、経口 CBD、気化 CBD、および CBD 優位大麻の効果比較」と題された研究には、大麻を含む薬物の常用歴のない健康な男女 9名づつ、計 18名が参加しました。

参加者は以下の 4つの試験薬を、1週間以上の間隔を空けて、それぞれ投与されました。

(1) 100mg/dayの CBDアイソレート(経口)
(2) 100mg/dayの CBDアイソレート(気化吸入)
(3) CBD 100mg, THC 3.7mg の大麻草(気化吸入)
(4) プラセボ

プラセボおよび CBD 優位の大麻草は、国立薬物乱用研究所(NIDA)から供給されました。(3) の大麻草のカンナビノイド含有率は、CBD 10.5%:THC 0.39% でした。これは連邦法上、「ヘンプ」と「大麻」の分類上はぎりぎりで大麻に区分されますが、実質的にはフルスペクトラムのヘンプ由来 CBD 製品の原料に限りなく近いものと考えられました。(最近まで NIDA から供給される研究用大麻は単一品種でかつクオリティが問題視されるものでしたが、世論の盛り上がりを受け改善が得られたようです。)

(1) と (2) の CBD は、合成のアイソレート(Albany Molecular Research社)が使用されました。

気化吸入はボルケーノと呼ばれる専用の器具を用いて行われました。


被験者は (1) 〜(4) の使用から、0, 0.5, 1, 1.5, 2, 3, 4, 5, 6, 8 時間後に、以下の項目に関するチェックを繰り返し受けました。

A:主観的酩酊感: 楽しい、不快、好き、気持ち悪い、ドキドキする、不安、落ち着く、勘ぐる、眠い、目が覚める、イラつく、やる気が出る、落ち着かない、空腹感、口渇感、目の充血、記憶障害、喉のイガイガ、ルーチンワークへの支障)

B:認知機能についてのテスト: 処理能力(DSST)短期記憶(PASAT)自動車の運転に必要な注意力(DAT)

C:血圧と心拍数

D:血中濃度:CBD / THC


結果をまとめたのが上記の表です。

A:主観的な精神作用に関して、CBDオイルを経口摂取した場合はプラセボと違いはありませんでしたが、気化吸入した場合には「心地よい」および「好ましい」と感じる人が増えました。空腹感、口渇感、のどのイガイガ感も気化吸入では感じられました。

またこの主観的影響は女性のほうが感じやすいようです。CBD 優位の大麻草では男女で以下の差が観察されました。

楽しい(女性:61.2 vs 男性:35.6)
口渇(女性:55.1 vs 男性:16.6)
目の充血(女性:16.2 vs 男性:5.3)
記憶の障害(女性:12.6 vs 男性:0.2)
喉のイガイガ(女性:82.8 vs 男性:37.1
ルーチンワークへの支障(女性:15.4 vs 男性:0.2)

CBDアイソレートの吸入でも楽しさ(女性:42.9 vs 男性:20)、 好ましさ(女性:46.1 vs 男性:31)に関して、統計学的に有意ではないものの、やはり女性の方が高いスコアが得られました。

B:認知機能テストについては、いずれの群もプラセボと違いがありませんでした。(女性の方が男性より優れていましたが、薬物の影響は考えられませんでした)

C:脈拍は CBD 優位の大麻を使用した群だけ、投与後1時間で上昇しました。

D:CBDの血中濃度は気化吸入では使用後1時間でピークに達し、8時間ほど残存しました。経口摂取では使用後4時間がピークでした。血中濃度に関しては男女の間に大きな差はありませんでした。また THC 含有量が 0.39% の大麻でも、血中から THC が検出されました。

過去の研究では 16mg の吸入では精神症状はなく 400mg の吸入では精神症状があるという結果が得られています。今回の結果を踏まえると、CBD も比較的多い量を気化吸入すると精神作用が得られると考えられます。

しかし、CBDを気化吸入して得られる精神作用は THC のそれとは全く異なりました。その精神作用の言語化は非常に難しいようです。

今回の実験で使われた大麻はアメリカでヘンプとして流通しているものに限りなく近いと考えられます。このことから、フルスペクトラム CBD製品のふるまいはアイソレートと異なることが改めて示されたと言えるでしょう。

また今回の研究では、女性の方が CBD に対する感度が高いことが示されました。これは THC に対する感度が女性の方が高いことを示した先行研究と一致する結果と言えます。ただその理由は現時点では不明であり、今後の研究課題です。

またこの研究の限界点として (1) 製品の種類や投与経路のバリエーションが少ない (2) 参加者数が少ない (3) 実験室で行なっているので主観的作用に影響を与え得ることが挙げられています。

またここまで「気化吸入」と書いてきましたが、ボルケーノによる Vaporizing と Vaping は厳密には異なります。ボルケーノが大麻草を直接加熱するのに対し、電子タバコによる Vaping ではプロピレングリコールや植物グリセリンなどの溶媒に一度成分を抽出したものを加熱し、気化吸入します。合衆国ではこの Vapeリキッドに添加されたビタミンE を原因とする間質性肺炎の流行が昨年、大きな社会問題となりました。今回、ボルケーノを用いて得られた結果が、そのまま Vape にも当てはめられるかについては、議論の余地があるように思えます。

まとめとして、CBD の気化吸入には精神作用があるが、安全面では問題点は指摘されなかったと言えるでしょう。

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)

 

 

 

 

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