ダメ絶対! 御用学者の悪行を暴く

我々は 2018年に、警視庁が公開した『大麻を知ろう』と題された啓発資料の問題点について、ブログと YouTube にて指摘しました。

第一回  川畑先生への反論
https://www.greenzonejapan.com/2018/11/16/police_1/
https://youtu.be/260mh5GV1qM

第二回  金子先生への反論
https://www.greenzonejapan.com/2018/11/24/police_2/
https://youtu.be/hEyXPlZWDvE

すると読者や視聴者から、他にも問題点があるとの情報が寄せられました。京都府立洛南病院の川畑俊貴副院長、京都大学薬学部の金子周司教授のいずれも、講演やウェブサイト上で、自身の主張にとって都合の良いデータを切り貼りして引用しているのです。

 1) 川畑先生の「大麻はアルコールより依存性が 10倍高い」という主張の真偽について

『大麻を知ろう』のインタビューの中で、川畑先生は「アルコールの依存症化率はアルコール常用者の 0.9%ですが、大麻の依存症化率は 10%とされています」と述べています。また彼は警察学論集という警察官向けの専門誌でも同じことを主張しています。

しかしこの主張の「お酒を常用する人のうち依存症になるのは 0.9%だけ」という部分、海外の学術報告とは大きく隔たっているのです。

0.9%という数字の根拠を調べてみたところ、それらしい数字が厚生労働省のウェブサイト上で見つかりました。2013年に行われた成人の飲酒行動に関する全国調査で得られた結果に、アルコール依存症の有病率(生涯罹患率)が 0.9%という数字を見つけることができます。

しかし、この 0.9%についての分母に注目してください。これは成人人口の 0.9%であって、アルコール常用者の 0.9%ではありません

2012年に行われた国民健康栄養調査では、飲酒習慣があるのは成人の 19.7%と報告されています。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h24-houkoku-06.pdf

成人の 19.7%がアルコール常用者で、0.9%がアルコール依存症。つまりお酒を飲む人に限っていえば、およそ 20人に1人がアルコール依存症というのが、これらの数字の正しい解釈なのです。

実はそれよりもさらに多くの方がアルコールの問題を抱えているという調査結果もあります。

上は鳥取大学医学部の尾崎米厚先生の論文から引用した表ですが、「どこからが病気なのか」という点については、さまざまな基準があることがわかります。たとえば、AUDIT というスコアで 12点以上は問題飲酒者と考えられており、なんと成人の 5.3%が当てはまるそうです。飲酒習慣のある人に限れば、25%が問題飲酒者ということになります。

このように川畑先生の主張する、「アルコールの依存症化率は飲酒者の 0.9%」というのは単純な間違い、もしくは意図的なミスリードです。

問題はこれだけではありません。今度は「大麻の依存症化率は 10%」の根拠を見ていきましょう。

確かに、アメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)の「大麻に依存性があるか?」というページには、大麻使用者の 9%が依存症になる恐れがあると書かれています。

こちらには、根拠となる参考文献へのリンクが添えられており、2011年にコロンビア大学の研究者によって書かれた一本の論文に辿り着きます。この論文、大変興味深いことに、「ニコチン、アルコール、大麻、コカインを初めて使用した人が依存症に陥る確率と予測因子について」というタイトルなのです。

そして大麻使用者の 8.9%が依存症に移行するという結果の隣には、タバコ使用者の 67.5%、そしてアルコール使用者の 22.7%が依存症に移行するという結論が記載されています。

つまり、川畑先生が引用した 10%という数字を導き出した研究は、全く同じ条件でお酒の危険性を 23%と述べているのです。この 23%という数字を引用せず、0.9%という手に入る限り最も小さな数字を引っ張り出してきた川畑先生のやり方は科学者として正しい姿勢と言えるでしょうか?

2) 金子先生が主張する「大麻には精神依存性がある」の根拠について

『大麻を知ろう』第二回に登場した京都大学薬学部の金子周司教授は、自身の京都大学のウェブサイトでも大麻に対する意見を公開し、「我が国では大麻が医療用あるいは嗜好品として容認される必要も必然も全くない」と断言しています。

https://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/channel/social1.html

その根拠として、金子先生は違法薬物の一覧チャートを提示し、大麻の依存性が高いと述べているのですが、注目すべきは参考文献として言及されているのが 2007年に『Lancet』に掲載されたデイヴィット・ナット博士による論文である点です。

この論文と著者は、薬物政策の歴史を語る上で欠かす事のできないものです。依存症や薬物問題を専門とする精神科医で、英国ブリストル大学の精神薬理学教授であったナット博士は、英国の違法薬物の法規制に納得していませんでした。というのは、彼が現場で感じる薬物の危険度と、法規制がちぐはぐであると感じられていたからです。

たとえば、タバコが健康上、悪影響が大きいことは周知の事実ですが、依然としてどこの国でも合法です。一方で、多くの国で厳しく規制されている大麻などは、実際には本人の健康への影響を含め、誰にも迷惑をかけることはないと感じていたようです。

「違法なものは危険で、合法なものは安全に違いない」という思い込みを一度捨てて、なるべく客観的に薬物の安全性について評価を行おうという試みの結果、執筆されたのがこの、「薬物の害についての合理的な評価法の開発」と題された論文なのです。

この研究では、MCDA という総合的な分析方法を用いたところ、合法であるお酒やタバコ、睡眠薬よりも、違法である大麻やエクスタシー(MDMA)の方が安全であるという結果が得られました。(この研究の結果は世界に衝撃を与え、2020年9月の時点で 1300回以上引用されています。)

この結果を元に、ナット博士は 2009年、「エクスタシー(MDMA)は乗馬より危険が少ない」という持論を展開したことにより、内務大臣の逆鱗に触れ、イギリス薬物乱用諮問委員会の会長の座を解任されることになりました。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/デビッド・ナット

これを「科学に対する政治の介入」として、複数の同僚が抗議の意を込めて委員会から辞職、ナット博士と彼らを中心に新たに「薬物に関する独立評議会」が結成され、この評議会は 2010年に再び、薬物の危険性ランキングに関する論文を発表しました。

その結果が以下です。前回の調査より更に多角的な視点から様々な薬物の危険性を総合評価したところ、不名誉な危険性第1位に輝いたのはお酒でした。ちなみに大麻は8位で、お酒と大麻の比較では 72 vs 20 でお酒の方が3倍以上、危険性が高いと結論されています。

https://www.researchgate.net/publication/285843262_Drug_harms_in_the_UK_A_multi-criterion_decision_analysis

この論文は、薬物政策に関する国際委員会(GCDP)のレポートで引用されています。GCDP は各国の薬物政策の見直しを提言するために  2011年に作られた有識者団体ですが、元首相経験者 14人、ノーベル賞受賞者 5人を含め、その顔ぶれは錚々たるものです。彼らの働きかけにより諸外国では薬物非犯罪化の流れが加速しています。

このように、金子先生が引用した元論文は、合法なドラッグと違法なドラッグを合理的に比較するという趣旨で書かれたものでした。それを金子教授は都合よく、違法ドラッグについてのデータのみを切り取り、著者の意図と真逆の結論を導いています。この件についてナット博士にコメントを求めたところ、「私の研究結果を理解するためには、酒やタバコを含む全てのドラッグのデータを提示することが重要です」との意見を頂きました。金子先生には真摯に受け止めて頂きたいと思います。

3) これらの情報操作の弊害について

これらの医師・研究者および公的機関による情報操作は、以下の点から有害であると考えています。

A:大麻の医療目的の使用を阻害する。

国際的な法規制の変更を背景に、日本でもそう遠くない未来に医療目的の大麻使用は合法化される可能性が高いと我々は考えています。しかし人々の意識に染み付いたイメージは簡単には払拭できません。大麻についてのイデオロギーに基づいたデマは偏見を助長します。それによって救われるべき人の医療大麻へのアクセスを阻害する事が懸念されます。

B:本当に危険な薬物に対しての警告が無意味になる。

大麻について公的機関が発信する情報が正確でないことを知った人たちは、その他のハードドラッグに関する情報も疑うようになります。警察や厚生労働省が「オオカミ少年」になってしまうのです。結果として、覚せい剤やヘロインなどのハードドラッグへの警戒心を逆に低下させていることが海外の識者からも指摘されています。
https://www.greenzonejapan.com/2020/05/02/comments/

C:公的機関への信頼を損ねる。

信頼を損なうのは薬物に関する情報だけではありません。大麻に関して誤った情報を意図的に流布している行政機関が発信するその他の情報に関しては、信頼できるのだろうか? そのような疑心暗鬼に陥るのは当然とも言えるでしょう。

今回の川畑先生は京都府職員、金子先生は京都大学所属、二人のインタビューを掲載したのは警視庁(東京都)です。彼等は大麻についてのデマを流すことで、所属組織の信頼を毀損しています。

D:サイエンスへの信頼を損ねる。

それだけではありません。まるで客観的なデータを提示するふりをして、自身の信条を補強するデータだけを都合良く切り貼りする。このような姿勢は、科学全体に対する信頼を損ないます。本来、サイエンスとは客観的な立場から物事を判断するための尺度であったはずですが、残念ながら正しく機能していると言い難い状況です。

あらためて、両先生に対して遺憾の意を示すとともに、主張の撤回を求めます。

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)

 

 

Special Thanks:

本記事は以下の方々からの情報提供を元に執筆しました。

ただ(しい依存症と薬物教育を願うアラ)ぃさん  Twitter: @420nanoda
gyoenjiあきらくん Twitter: @Gyoenji

またNutt博士へのメールに際し

DS@アメリカの大麻産業を解説するノート Twitter: @420_note

に英文添削を頂きました。

 

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