高樹沙耶さんと医療大麻、その功罪

1228日放送のバイキング・ザ・ゴールデンという特番に、高樹沙耶さんのロッジで取材を受けた。何人かの友人に報告すると「大丈夫?」という反応が目立った。

気持ちはわからなくはない。

執行猶予中の彼女は犯罪者で、現代の「えた・ひにん」の扱い。オンエアされれば、「犯罪者の肩を持つのか」と批判される可能性はある。それでも、私は話を引き受けることにした。


一人暮らしを始めて以来、家にテレビがない。だから私は、芸能人としての彼女を知らない。初めて名前を聞いたのは、彼女が選挙に出たとき。そのときは正直、気にしていなかった。次に名前を目にしたのは、例の騒動である。

そのとき私はサンフランシスコにいて、それはちょうどジェフェリー先生のクリニックにお邪魔し、先生がこれまでに診てきた医療大麻患者3000人のカルテが詰まったキャビネットを見せてくれた日だった。目の前から2ブロックのところで買える植物の干物。それを持っていたというだけで、日本のメディアが一斉に、鬼の首を取ったように騒ぎ立てているのを、海の向こうから眺めている。この奇妙な感じが想像できるだろうか?

その後も、彼女へのバッシングは続いた。昼下がりの枠にはうってつけの素材。
マスコミだけでなく、医療大麻に好意的な層からも彼女が「しくじった」ことを非難する声は大きく、ツイッターのコメント欄には罵詈雑言が並んだ。そういうのを見ていると、つい何かを言いたくなるのが性分だ。確か私は、高樹さん擁護を暗示するようなツイートをしたのだと思う。

すると翌日、教授から電話がかかって来た。私のツイートをみて心配した「善良な市民」が、わざわざ大学に電話をかけて来てくれたらしい。やれやれ、である。


「あの女優のせいで、日本の医療大麻解禁は逆戻りした」と声高に言う人があまりに多いので、私は調査を行うことにした。予定していた医師への医療大麻に関するアンケート調査の項目に 医療大麻について知ったきっかけ」という項目を入れてみたのだ。

予想通り、高樹さんの立候補と逮捕をきっかけに、医療大麻という言葉を初めて知った人は多かった。およそ3割の医師が、高樹さんの一連の行動が医療大麻という言葉を知るきっかけとなったと答えた。けれど、高樹騒動をきっかけに、医療大麻を知った人が必ずしも、医療大麻の導入に反対した訳ではなかった。

(研究内容に関しては以下の動画を参照のこと)
https://www.youtube.com/watch?v=MAAQCnGveoY&t=9s

もちろん、違法行為は咎められて然るべきだ。だが、どこの国でも活動家というのは逮捕されているし、その先に議論が生まれて、最終的に法改正に至るというのが、王道であるのもまた事実だ。押し並べてみれば、一連の騒動は医療大麻の認知度を高めたという意味でそれなりの意義があったと、私は自分の調査から暫定的に結論した。


この結果が出てから私はふと、石垣に行ってみようかと思った。とくに用事がある訳でもない。それでも、一度、顔をみて話をしてみたい。何故だろう? ふと頭に浮かんだのは「お墓参り」という言葉だった。

私が今のように医療大麻について発言するようになったのは彼女に対する「医者でもないくせに」という批判が影響している。面識はないし、当然意見の違いもあるだろう。けれど同じ志を継ぐ者として、手を合わせに行くべきな気がしたのだ。

靖国神社に参拝に行く政治家もこんな気分なのかもしれない。


空港まで迎えに来てくれた彼女は、想像していたより元気だった。

「もともと環境活動をやってて、最初は 311 の後の原発問題だったのよね。それで干されて、じゃあこっちからやめてやる!って… いつのまにか大麻の活動家になっちゃった。」

「昔は鼻持ちならない奴だったんじゃないかと思う。事件の後、反省したよね」

彼女は自虐的に言うけれど、私が知る限り、彼女はよく笑う、表裏のない愉快な人だった。損得を考えず、直感で決断するタイプだ。そうでなければ、もっとスマートに世の中を渡っていっただろう。だけどこういう人は、生まれ変わってもやっぱり自分の信念の旗の下に生きて、死んでいくのだろうなと、僕はぼんやりと思った。

幸いにして、世界にはこの1年で追い風が吹いている。人生、9回裏の名誉挽回のチャンスは充分に残されている。このまま、座して死を待つ積もりはないと、彼女の瞳は語っていた。

僕らは緩やかな連携を約束し、僕は帰路についた。


それから2ヶ月。

ワイドショーの年末特番。テレビなんて編集次第でどんな風にでも印象が操作出来る。不安がない訳じゃない。けれどここで断るというのは、せっかく繋いでくれようとしているバトンを落とすようなものだ。

正直、カメラを向けられると、言いたいことの半分も出てこなかった。自分自身にがっかりである。なんとなく言おうとしていたことは高樹さんがフォローしてくれた。さすがプロである。オンエアは観たくないが、観ない訳にもいかないだろう。


思い出すのは、松山千春さんのことだ。

北海道の鈴木宗男議員が国策捜査で逮捕された頃、その記者会見には、同じく北海道出身の松山千春さんが必ず同席していた。特に何を言う訳でもない。ただ黙って座っている。ただその姿は、この人は間違っていないという無言のメッセージを発していた。

私の存在も何かの役に立つよう、願うばかりである。

正高佑志

2 Replies to “高樹沙耶さんと医療大麻、その功罪”

  1. SmokeS Gt&Vo bling より: 返信

    貴方の様な侍の、勇気ある行動が、人の心を繋いだり、揺らしてくれる。
    本当にありがとうございます。
    全ての行動に、感謝と尊敬を込めて。

  2. 法華経 第10 法師品に於いて、釈迦牟尼如来ブッダは自身の入滅後について予言を語ります。
    法師とは端的に教えを説く人。どんな迫害に遭っても、教えを説き、守り抜け、という激励を遺しました。
    第11になると地底人がUFOのようなもので現れると、現代で追いつけるか?否かの状態に陥りますが、
    少なくとも法師を貫く時代である様に想います。

    互いに宇宙のエネルギーを用いて、決して勢いが衰えることなく次の時代を急ぎましょう。

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