アメリカでは大麻の合法化が進み、若者が大麻に触れる機会が増えていることが社会問題になっています。そんな中、「親の影響」がどれほど子どもの大麻使用に関わっているのかを調べた大規模調査が発表されました。
調査の概要:
研究チームは米国全国の12〜17歳の若年者11,969人を対象にした2022年の全米薬物使用調査(NSDUH)を分析しました。注目したのは、①親が大麻使用をどれだけ承認/不承認しているか、そして②親子関係の「温かさ」(子どもが親から愛情や支援を感じているか) の2点です。これらが若者の大麻使用や大麻使用障害(CUD)の有無にどう影響するかを調べました。
・親の不承認が強力な「ブレーキ」に
結果、親が大麻使用を強く不承認していると答えた子どもは、大麻を使う確率が約4分の1であることが明らかになりました。また大麻使用障害のリスクも約3分の1でした。つまり、親が「大麻はダメ」と明確に伝えること自体が、子どもの大麻使用を大きく抑えているのです。
・「温かさ」との組み合わせが重要
重要なのは、親子関係が「温かい」と感じている子どもほど、大麻使用率が低かったという点です。単に厳しく禁止するだけでなく、愛情や支援がある関係の中での「不承認」が効果的であることが示されました。
・どんな子が大麻使用のリスクが高い?
年齢が高い(16〜17歳)
たばこやアルコールを使っている
友達に大麻使用者がいる
こうした条件の子どもは、大麻使用のリスクが高いことも明らかになりました。
・親ができること
明確に大麻使用を不承認であると伝える
日常的に子どもとの信頼関係を築き、「温かい関係」を意識する
この2つの組み合わせが、子どもの大麻使用を防ぐ大きな力になる可能性があります。
参考文献:
Young B, Dai HD. Parental influence on youth cannabis use: The interplay between disapproval and warmth.* Addictive Behaviors Reports. 2025.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40612055/
執筆者: 正高佑志 Yuji Masataka(医師) 経歴: 2012年医師免許取得。2017-2019年熊本大学脳神経内科学教室所属。2025年聖マリアンナ医科大学・臨床登録医。 研究分野:臨床カンナビノイド医学 活動: 2017年に一般社団法人Green Zone Japanを設立し代表理事に就任。独自の研究と啓発活動を継続している。令和6年度厚生労働特別研究班(カンナビノイド医薬品と製品の薬事監視)分担研究者。 書籍: お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社)、CBDの教科書(ビオマガジン) 所属学会: 日本内科学会、日本臨床カンナビノイド学会(副理事長)、日本てんかん学会(評議員)、日本アルコールアディクション医学会(評議員) 更新日:2025年8月5日
コメントを残す