医療大麻と注意欠如・多動症(ADHD)

2020.11.07 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan
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医療大麻と注意欠如・多動症(ADHD)
2020.11.07 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan

ADHDとは

私が小学生だった頃のクラスメイトに、授業中、掃除道具箱の中に入って鳩時計の真似をする子がいました。当時「極端に落ち着きがない子」と思われていた彼は、ADHD という言葉が広く市民権を得た今日では、正式に ADHD の診断を受けるでしょう。

注意欠如・多動症(ADHD)とは、年齢に見合わない「不注意さ」、好きなこと以外に対する集中力が続かない「多動性」、思いついたことを即座に行動に移してしまう「衝動性」を特徴とし、それによって生活や仕事に問題をきたす状態とされています。

ADHD の有病率は高く、学童期の小児の3〜7%と報告されています。つまりクラスに1人か2人くらいは ADHD と診断され得る子が交じっているということです。加齢に伴い有病率は低下するようですが、大人でも人口の2%程度が ADHD の定義を満たすようです。
http://www.rehab.go.jp/ddis/

(ADHD 傾向を持つ方の多くが通常の社会生活を営んでいます。たとえばエレファントカシマシの宮本浩次さんは、音楽番組のトーク時の落ち着きのなさから ADHD 傾向が疑われますが、音楽家として卓越した功績を残しています。)

ADHDと二次障害

普通の人がしないようなうっかりミスを繰り返し怒られる。どうしても計画通りに提出物が準備できない。余計な一言で周囲との軋轢を生んでしまう—。このような特徴のために、ADHD の方はトラブルを抱えやすく、自己評価も低下しがちです。その結果として鬱や不安など、さらなる問題を抱える確率が高まります。これらは二次障害と呼ばれます。

また ADHD の患者さんは、ギャンブルや薬物などの各種依存症にも罹患しやすいと考えられています。実際に、あるクリニックが行った調査では、薬物依存症患者の約半数、およびアルコールとギャンブル依存症の3分の1に発達障害が合併していたと報告されています。
http://www.maria-hill.jp/14866042308350

大麻使用者の中にも、発達障害患者は比較的多く含まれると考えるべきでしょう。

大麻使用は自己治療?

従来、「薬物乱用」と考えられてきた ADHD 患者の大麻使用。しかし医療大麻という概念が広まりつつあることにより、これは広義の自己治療なのではないかという学説が近年、提唱されつつあります。

実際に私の友人で、アメリカの報道機関に勤務していた方は、あまりの落ち着きのなさに業を煮やした上司から「毎朝、大麻を一服してから出社するように」と指示され、それによって実際に症状の改善を得たと語ってくれました。

大麻が ADHD に対して治療的に作用していると感じているのは彼女だけではありません。2016年にデューク大学精神科の研究チームが興味深い報告を行っています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27227537/

彼らは「2ちゃんねる」のようなオンライン掲示板上の「ADHDと大麻について」の書き込みをランダムにサンプリングし、使用者たちがどのように感じているかを解析しました。すると、大麻が治療的に作用するという意見は、悪影響を及ぼすと感じている意見の3倍にのぼることがわかったのです。

小規模ではありますが、臨床研究も始まっており、2017年にはキングス・カレッジ・ロンドンの精神科のチームがサティベックスを用いたパイロット研究の結果を報告しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28576350/

この研究には30名の成人 ADHD 患者が参加し、15名ずつ、実薬(サティベックス)とプラセボに割り付けられて、およそ1年間にわたって使用を継続しました。

その後に「Qbテスト」と呼ばれる、ADHD の評価のための試験を行いスコアを比較しました。結果は、統計的な有意差は認められないものの、実薬群で高い値を示しました。また、衝動性や多動性、不注意に関する有意な改善が認められました。

これらの結果から筆者らは、ADHD 患者の大麻使用が自己治療であるという仮説が支持されると述べています。

ADHD と CBD

CBD に関しても ADHD の症状緩和に効果があったという体験談が報告されています。(詳しくはCBD Nationをご視聴ください。)

しかし残念ながら現時点で CBD が ADHD に対して有効であることを示す科学的な根拠はありません。現状の科学的知見から、不安やうつなどの2次障害に対する効果は期待できる可能性が高いでしょう。今後の更なる研究の充実が望まれます。

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)

 

 

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