医療大麻と嗜好大麻の違いについて

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写真:ismoke より

医療大麻の話をすると、よく問われることに「医療大麻と普通の大麻は同じなのか?」という質問があります。これは「バースデーケーキと普通のケーキは同じなのか?」という質問に、とても似ています。

あるケーキがバースデーケーキであるかどうかは、ブランドや値段、大きさや形状とは本質的に関係がありません。たとえ100円のコンビニケーキであっても、誕生日を祝う目的で食されるケーキはすべてバースデーケーキであると私は理解しています。同じように、大麻が医療目的で使用される場合、それは品種や用法に関わらず、医療大麻と呼ばれます。

しかし、ケーキにも誕生日祝いに特化した商品が存在するように、大麻の世界にも、「医療目的に特化した大麻」と呼べるものが近年、存在します。それが「ハイにならない大麻(および加工製剤)」です。

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そもそも大麻草には、カンナビノイドという大麻に特有の化学物質群が何十種類も含まれています。その中で、いわゆる「大麻の精神作用」をもたらすキーとなる成分は THC(テトラヒドロカンナビノール)と呼ばれています。THC が沢山含まれる方が精神作用がより強いため、嗜好目的に栽培される大麻は品種改良の結果、年々、THC含有量が増している傾向がありました。(これは世の中で流通する柑橘類が、年々甘くジューシーになっていくのと同じ構図です。)

しかし、なるべく多くの THC を含む品種を選んで栽培しているにも関わらず、何十株に一株、「ハイにならない株」というのが混ざっていることに、生産者は気がついていました。この突然変異で生まれた「ハイにならない株」は嗜好大麻の市場では価値が無く、誰一人として見向きもしなかったといいます。しかし、大麻草に優れた医療効果があり、とくに小児の重症痙攣を予防することが明らかになるにつれ、この「失敗作」にスポットライトが当たります。

他に治療法がないとはいえ、幼い子供に毎日大麻を与える続ける事に不安を覚えるのは当たり前です。そのようなニーズの出現で、精神活性が低く、ハイにならない大麻は、ここ数年で「真っ赤なお鼻のトナカイさん」のように、その評価を覆しました。

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このハイにならない品種に、THC の代わりに多く含まれているのが CBD(カンナビジオール)とよばれる化学物質です。CBD は THC の精神作用に対して、抑制的に働きます。たとえるなら、THC がアクセルなら CBD はブレーキです。一般的に、CBD を多く含む大麻やその製剤では、嗜好用大麻のような「深い酩酊状態」に至ることは少ないと考えられています。また精神作用を抑える以外にも、CBD には優れた薬理作用があることがわかってきました。たとえば癌細胞にアポトーシス(細胞死)を誘導する作用などです。

そして、このTHCとCBDは、各々単独よりも一緒に作用した方が治療効果が高まることが近年、報告されています。(それはキース・リチャーズとロン・ウッドがそれぞれ単独のギタリストとしては決して優れたプレイヤーではないけれど、一緒に演奏すると ”ローリング・ストーンズ” という最強のバンドになるのと似ています。)

医療大麻の研究は急速な発展途上にあり、現在のスタンダードは将来的には覆される可能性も高いのですが、2017年現在では、医療用に使用する場合、THC:CBD を 1:1で摂取するという方法が最も効果があり、汎用性が高いようです。

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また、嗜好大麻と医療大麻の違いに、量の問題があります。一般的に、鎮痛や抗不安などの治療効果を得るために必要となる大麻成分の血中濃度は、ハイになる血中濃度より低いと言われています。つまり、泥酔するほど吸わなくても痛みはとれるということです。(注: たとえば腫瘍の縮小などを狙う場合、多量のカンナビノイドを必要としこの限りではありません。)

私が観察する限り、これはアルコールとは真逆のように思えます。嗜好目的にアルコールを使用する場合、その量はほどほどで済みます。しかし、アルコールを利用して痛みを軽減したり、辛い現実を忘れようとする場合、かなりの量を飲むことが必要になり、結果、他人に迷惑をかけ、やがて自身に深刻な健康被害をもたらす傾向があるようです。
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ところで、皆さんは「これは朝ごはんなのか? 昼ごはんなのか?」と悩んだことはありませんか? 境界線がはっきりと引きずらいものは世の中に多くあり、医療大麻と嗜好大麻の区別もまた、ときに曖昧です。末期の癌患者が痛みの緩和の為に大麻を使用するのが、医療目的であることに異議を唱える人はいないでしょう。何らかの精神的なダメージの後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)夜中にフラッシュバックで眠れない場合なども、医療大麻として扱われるべきですね。

それではうつ病はどうでしょう? うつ病と診断され10種類以上の処方薬を併用し、それでも効果が得られない場合に医療大麻を試してみる、これも医療利用と言えると思います。

それでは、かつてうつ病と診断されたけれど、現在は社会復帰している方が、再発予防に常用する場合はどうでしょうか? これも二次予防という意味では、脳梗塞後の血液サラサラや降圧薬と同じく、医療の一部だと考えることもできると思います。

ではもう一歩踏み込んで、もともと内向的で落ち込みやすい性格の方の場合はどうでしょう? 病気とは診断されない、しかし大麻を定期的に使用する方が、生きるのが楽。そういう人は、潜在的には沢山いると思われます。

このあたりが病気と体質の境界線です。この人達は、医療大麻の適応範囲に含まれるのでしょうか?

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よくよく考えてみると、病気なのか、性格なのかという区分は時代と場所によって変化します。私が小学生の頃、「落ち着きが無い子」だった人達は今では「ADHD(注意欠陥多動症候群)の子」と呼ばれるようになりました。かつては「恰幅の良い」人だったのが、今では「メタボリック症候群」という診断を与えられるようになりました。

今、「大麻を乱用している人」の中には、エンドカンナビノイド(内因性大麻成分)の量が生まれつき少ない人が相当数、含まれているはずです。今後、医療大麻とカンナビノイドシステムへの科学的理解が深まるにつれて、これまで犯罪者や社会不適合者としての扱いを受けていた人々は「エンドカンナビノイド不全症候群」患者として、治療の対象になるかもしれません。

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そもそも、健康とはなんでしょうか? WHOの定義するところによると、健康とは「単に病気がないというだけではなく、身体的、精神的、そして社会的な Well-being が保たれている状態」とされています。医療の目的が、広く健康を増進することであるのなら、精神的な Well-being の改善、そして社会的な Well-being の向上を目的とした大麻の利用も医療大麻ということになり、嗜好大麻との境界はより一層曖昧になります。

このように医療大麻について突き詰めて考えてみると、病気とは何か、医療とは何かという話につながります。これは医師である私にとって、非常に興味深い事です。

まとめ

①医療大麻と嗜好大麻の違いは、バースデーケーキと普通のケーキの違い。

②近年、医療用の「精神作用の弱い品種」が存在する

③治療効果を得る為に必要な量は、ハイになる量より少ない(例外あり)

④医療目的の範囲はときに曖昧

2 Replies to “医療大麻と嗜好大麻の違いについて”

  1. 物凄く分かり易かったです。
    もし、医療大麻が取り入れられたらコストは相当高くなるのでしょうね。線維筋痛症は難病指定から外されてますから、処方してもらいたくても経済的に無理かも。
    アセトアミノフェンのせいで肝臓が侵されるらしいけどそれしか効かない(トラムセット)。実際侵されつつある。軽い脳梗塞もなったが救急へ行ったのに別の痛み止めで帰された。その後も放置のまま。
    血圧が低すぎて上60の下40台の事もあるが医療大麻で改善ならないかな、低気圧も辛いです。
    日本の進歩を祈ってます。

  2. 日本政府公認
    嗜好大麻草栽培親善大使
    モリバヤシ マサトシ郷

    THC100% 
    CBD100% 
    1対1の割合で摂取

    但し→100%有機栽培です。
    化成飼料栽培はアレルギーを発症させてしまいます。

    大脳生理学/細胞生理学/脳神経細胞を正常に戻します
    結局として臓器は正常な働きかけので、病は無く成りましす。

    カナビスレセプター 

    作用:多幸感・ストレスフリー
    副作用:食欲増進・熟睡           
    無病息災です。
    但し、怪我は除きます。 

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