シアトル・ヘンプフェスト

新雑誌『HEMP LIFE』が、10月、キラジェンヌより創刊されました。大麻草について、日本古来の伝統、医療利用、嗜好利用、産業用利用、とあらゆる方向から考えていく雑誌です。理事の三木が、過去 7年間にわたって見てきたシアトル・ヘンプフェストについて、創刊号に寄稿しました。キラジェンヌさんのご厚意により、同じ内容を掲載させていただきます。

2017年 8月18日から20日にかけての 3日間、恒例のシアトル・ヘンプフェストに参加した。今年 27回目になるヘンプフェストは、10万人という入場者数のある盛大なイベントだ。

SONY DSC

ヘンプフェストが初めて開催されたのは 1991年。大麻を禁止する理不尽な法律の改正を求める一握りの運動家と彼らに賛同するミュージシャンらが 500人の参加者を集めて始めたこのイベントは、またたく間に成長し、わずか 3年後の 1994年には入場者数が 15,000人に達した。これはまだ、カリフォルニア州で医療大麻が合法化される以前のことだ。以来、開催されなかった年が 1 回あるだけで、1995年以降は会場を現在のマートル・エドワード・パークに移し、年々参加者を増やしながら合法化運動を牽引してきた全米最大の「プロテスティバル」(抵抗という意味のプロテストとフェスティバルをかけた言葉)である。

会場のマートル・エドワード・パークはシアトルのダウンタウンにあり、有名なパイクプレイス・マーケットからも歩いて行ける、海岸沿いに 1.5キロにわたって広がる細長い公園だ。バンドの演奏やスピーチが途切れなく行われるステージが 4つ設置され、大麻関連商品、衣服や小物、食べ物を販売するブースの数は 700 を超える。主催者のほか、設営から撤去まで、1,000名を超えるボランティア・スタッフがイベントを支えている。入場は無料だが、10ドルほどの寄付をする人が多い。

私が初めてシアトル・ヘンプフェストに参加したのは 2010年、『マリファナはなぜ非合法なのか?』という本を翻訳中のことだ。それまでマリファナカルチャーには縁がなかった私だが、翻訳中の本の内容をよりよく理解する助けになればと思って恐る恐る出かけてみると、会場はサイケデリックな服に身を包んだ若者でごった返し、あちらでもこちらでも明らかにマリファナを吸っているのに、パトロールしている警官たちが何も言わないのに仰天した。午後4時20分になると、メインステージ前の広場ではジョイントが無料で配られて皆が一斉に火をつけ、あたりに立ち込める副流煙で、こちらまでハイになりそうだった。

スクリーンショット 2017-10-23 14.59.41

それから 7年、ヘンプフェストへの参加は今年で 6 回目になる。その間、アメリカでの大麻合法化の流れは大きく加速したように見える。2012年 11月、ワシントン州では I-520 と呼ばれる嗜好大麻の合法化案が住民投票によって可決され、コロラド州と並んで、嗜好大麻が合法である全米最初の州となった。2013年 8月には CNNで『WEED』というドキュメンタリーが放映され、これがきっかけとなって医療大麻合法化の大きな波が起きた。(その後、2014年と 2015年にも『WEED 2』『WEED 3』が放映されている。)2014年にはオレゴン州、アラスカ州とワシントンDCで、さらに 2016年にはカリフォルニア州、メーン州、マサチューセッツ州、ネバダ州で、やはり住民投票によって嗜好大麻が合法化された。医療大麻は現在、29の州とワシントンDCで合法である。今年行われた最新の世論調査では、アメリカ国民の 61%が嗜好大麻の合法化に賛成しており、医療大麻に関してはなんと 88%が賛成している。

dsc04689.jpg

会場の一番南寄りには、リック・スミス・ヘンポジアムと名付けられた屋外テントが設営される。ここでは3日間、大麻をめぐるさまざまなテーマについて、全米各地、ときには海外からもエキスパートが招かれてパネルディスカッションを繰り広げ、一般参加者の啓蒙の場、そして運動家たちにとっては各種最新情報を交換し合う場となっている。今年のパネルディスカッションのテーマを挙げると、「エンドカンナビノイド・システム:あなたの病気は大麻による治療に適しているか?」「最高の大麻草を育てるために:エキスパートによるアドバイス」「カンナビス製品の品質検査は十分か」「不治の病の子供を救う医療大麻」「テルペンの効果を理解する」「大麻に希望を見出す退役軍人」など、実に多岐にわたる。テーマは毎年、社会情勢や人々の関心を反映して少しずつ変化している。たとえば  2012年の嗜好大麻合法化をめぐる住民投票の直前に開かれたヘンプフェストはやはりそれが一番の話題だったし、この 2〜3年は医療大麻、とりわけ CBD をめぐる議論が活発だ。

SONY DSC

出展ブースの内容や参加者の様子にもこの 7年で変化が見られる。きちんとしたデータがあるわけではないが、嗜好大麻が合法化された翌年以降、それまでの参加者は白人の若者が圧倒的に多かったのが、黒人をはじめとするマイノリティグループの参加者が増えているのだ。アメリカにおける大麻の規制がそもそも人種差別に根ざしたものであったこと、大麻がらみの逮捕者数が人口の分布とは不釣り合いにマイノリティに偏っていることを考えると、合法化以前のヘンプフェストには行きたくても行けなかった人たちが、ようやく堂々と参加できるようになったのだと考えれば納得がいく。

スクリーンショット 2017-10-23 14.57.11

イベント全体のテーマや色合いは時間とともに変化しながらも、第1回からずっと変わらないことが一つある。それはこのシアトルヘンプフェストが、虐げられた社会的弱者を苦しめる間違った法律、意味のない規制に対する抵抗の祭りであるということだ。そして、アメリカの大麻合法化の最前線を行くワシントン州、とりわけリベラルなことで名高いシアトルだからこそ、このフェスティバルは 27年間、一度も大きな問題を起こさずに続いてきたのだと思うし、これからも、連邦レベルで医療・嗜好大麻がともに合法化されるまで続いていくことと思う。大麻の合法化に疑問を持っている人、日本からシアトルに遊びに行く予定のある人は、是非日程を合わせてこのお祭りに参加してみてほしい。大麻に対する見方がきっと変わる。

 

誌面とは一部異なる写真を使っています。創刊号はこちらからお求めいただけます。

 

コメントを残す