CBDは新たなゲートウェイドラッグ !?
産経新聞と鈴木勉特任教授に反論する

2020.10.10 | 国内動向 | by greenzonejapan
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CBDは新たなゲートウェイドラッグ !?
産経新聞と鈴木勉特任教授に反論する
2020.10.10 | 国内動向 | by greenzonejapan

2020年9月29日、産経新聞に掲載されたこんな記事が物議を醸しました。

https://www.sankei.com/premium/news/200929/prm2009290006-n1.html

記事の中に登場する湘南医療大学の鈴木勉特任教授のコメントは、明らかな誤りを含んでいます。

鈴木氏は「カナダでは医療大麻が容認されているが、国民皆保険制度がある日本とは医療体制が違い、(大麻の使用の是非を)議論する上での前提が異なる」と述べています。まるでカナダには国民皆保険制度が存在しないかのようです。

しかしカナダには日本と同じく国民皆保険制度が備わっており、外務省のホームページにも以下のように記載されています。

カナダの医療制度はメディケアと呼ばれる国民皆保険制度を採用しており,原則として患者の自己負担が一切なく、全てを税財源で公的に負担しています。

鈴木氏の発言はカナダとアメリカ合衆国の保険制度を混同している可能性があります。

また鈴木氏は、「カナダでは治療費が高額であり、病院で治療できない人たちが、痛み止めや病気により減少した食欲を増幅させるためなどの理由でやむを得ず使用している」と述べています。つまり、経済的事情で標準医療にアクセス出来ない患者が仕方がなく選択しているというニュアンスです。

しかし実際に治療費が嵩むのは医療大麻のようです。カナダでは医療大麻は公的保険でカバーされないため、医療大麻を必要としている患者の 50% 以上が経済的な理由で充分にアクセスできていません。先日も、活動家による医療大麻の保険適用を訴える請願活動が始まりました。(これらの請願は初めてではありません。)鈴木氏の「やむを得ず使用している」という指摘の根拠は不明です。

医療先進国のドイツの事例

医療大麻制度を導入しているのは北米だけではありません。医療先進国として名高く、国民皆保険制度を有するドイツでは、2017年から医療大麻の保険適用を開始し、がん・うつ病・多発性硬化症などの疾患に対し、医師が大麻を処方できるようになっています。ドイツ国内の医療大麻の保険適用申請件数は 3年間で累計 10万件を突破し、人口の 90%が加入している公的保険会社の医療大麻に関する支払額は今年だけで約92億円に上ります。今後の需要増加を見込み、これまでの輸入頼みの方針から自国内での栽培に注力する方向へと舵を切るようです。

日本と同じく国民皆保険の有するカナダやドイツで医療大麻が広く流布している理由について、思いを巡らせて頂ければ幸いです。

CBDも規制すべき?

産経新聞の記事の中で、鈴木氏はさらに下記のように述べています。

国内では最近、大麻にも含有されている成分を使ったオイルや電子タバコが、ネット通販などで多く流通している。口コミ欄には「リラックス効果抜群!」「イライラにすごくいいです」といった書き込みが見受けれられる。

こうした成分自体は現在、規制対象とはなっていないが、鈴木特任教授は「(違法な大麻の)使用につながりかねず、乱用を助長する可能性がある。規制を検討した方がいい」と話した。

文脈上、CBD製品を規制すべきと読み取る事ができます。
CBD には THC のような陶酔作用は無く、WHO のクリティカルレビューでも乱用の恐れや依存性は否定されています。実際に処方箋医薬品として流通している CBD製品 Epidiolex は、合衆国の乱用薬物の分類からも除外されています。これはつまり、ドラッグストアで買える市販の咳止めシロップよりも安全性が高いという判断に他なりません。

日本国内では、食品、サプリメント扱いでの流通になりますが、難治てんかんなどの一部の患者さんにとっての特効薬となっていることは、我々も学術的に報告しています。

このような側面を省みることなく、根拠なき規制を主張することは、患者さんの深刻な権利侵害に繋がり得ることを鈴木氏と産経新聞には自覚頂きたいと思います。

追記:CBDを規制すべきとの意見に関して、根拠があるかどうかを有志が 10月1日に鈴木氏にメッセンジャーで確認したところ、「CBDが問題にならないから大麻も大丈夫と考えられる可能性があると可能性を言ったもので、そのような調査があれば良いのですが。(原文まま)」との回答を頂きました。

 


DS Twitter:@420_note  https://note.com/fourtwenty

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)

 

 

参照
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/n_ame/canada.html
https://canadianvisa.org/life-in-canada/insurance/health-insurance
https://hightimes.com/news/petition-pushes-canadian-national-medical-cannabis-insurance/
https://merryjane.com/news/german-health-insurance-has-covered-nearly-dollar90-million-of-medical-marijuana-in-2020?s=ed
https://mjbizdaily.com/german-medical-cannabis-applications-for-insurance-reach-100000/
https://mjbizdaily.com/cansativa-wins-german-tender-to-become-sole-cannabis-distributor/
https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/CannabidiolCriticalReview.pdf

“CBDは新たなゲートウェイドラッグ !?
産経新聞と鈴木勉特任教授に反論する” への2件のフィードバック

  1. bahia より:

    発言者に理解を求めることが重要なことは勿論ですが、産経新聞の読者、またマスコミには伝わりません。ぜひ、産経新聞に訂正記事を求め、正高先生に記事執筆の機会を求めてはいかがでしょうか。

  2. よーかん より:

    「CBDが問題にならないから大麻も大丈夫と考えられる可能性があると可能性を言ったもの」との事ですが、産経の記事を読むと「CBDは大麻へのゲートウェイに繋がりかねないから規制を検討すべき」という文意にしか読めません。産経が医師の意見をねじ曲げたのか、この先生が日和ったのかは分かりませんが。。

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