胃不全まひにおける医療大麻の可能性

2023.03.17 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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胃不全まひにおける医療大麻の可能性
2023.03.17 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

○胃もたれ・胃痛・吐き気…知られざる糖尿病の合併症・胃不全まひ

病院で診療していると、なんとなく胃の調子がよくないと訴える患者さんと頻繁にお会いすることになります。胃カメラ検査を実施して異常がないと、“機能性ディスペプシア“と診断されることが多いのですが、これと似た“胃不全まひ(Gastroparesis)“という疾患概念が存在することをご存知でしょうか?
これは糖尿病やパーキンソン病などの神経が障害される病気を背景として、胃の動きを司る自律神経がダメージを受け、胃の働きが低下する一連の病態を指す概念です。具体的には胃もたれ、胃の膨満感、胃痛、吐き気・嘔吐などが症状として自覚されます。
(疾患についての詳細はこちらのNHKのウェブサイトを参照ください)
具体的な検査方法や治療法が乏しいこともあり、日本ではあまり知られていない胃不全まひですが、この病態と治療にカンナビノイド医療が光を当てつつあります。

○胃不全麻痺患者における血中エンドカンナビノイド濃度は変化している

消化管の複雑な自動調整にはエンドカンナビノイドシステムが関与していることは知られていますが、胃不全まひになる原因として、エンドカンナビノイドシステムの乱れが関与しているのではないかという研究が行われています。
2021年にテキサス工科大学の研究チームが行なった調査では、女性の糖尿病に伴う胃不全まひ患者では血中のアナンダミドと2-AGの値が低下しているという結果が報告されています。(男性では有意差はありませんでした)

〇胃不全まひ患者における大麻の使用は、症状や予後改善と関連している

実際に大麻を使用している人々のデータを解析することでも、大麻が胃不全まひに対して保護的に働く可能性が示されています。2012-14年における胃不全まひで入院した患者約5万人の大麻使用に関するデータを調べたところ、大麻喫煙率は4.2%であり大麻使用者では嘔吐が少ないことが示されました。

またNYの病院で医療大麻とドロナビノールを処方された24名の胃不全まひ患者においては、腹痛が有意に改善したことが報告されています。

これらの症状緩和に加えて、大麻の使用は患者の予後をも改善するかもしれません。アメリカで2008-2014年の間に“胃不全麻痺“という病名がついている患者140万人の入院記録を調べたところ、“大麻使用障害“の病名が併存している2.25%の患者は有意に死亡率が低く、平均在院日数が短かったようです。

 

〇標準医療の弱点を補完する大麻医療の可能性

これらの報告はいずれも介入研究ではなくエビデンスレベルの低いものですが、これらの知見には臨床的な観点から意義があるように思われます。なぜなら現代医学において、胃不全まひや機能性ディスペプシアに対する効果の高い治療法は今のところ存在しないからです。
西洋医学が得意な領域では標準医療を選択することをおすすめしますが、苦手な領域ではカンナビノイドをはじめとした代替医療を、安全性や経済的合理性に留意しつつ採用するのは理に適った選択だと個人的には考えています。

 

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)



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