規制のすき間で広がる「半合成カンナビノイド」――アメリカで何が起きているのか?

2026.01.21 | GZJ 安全性 | by greenzonejapan
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規制のすき間で広がる「半合成カンナビノイド」――アメリカで何が起きているのか?
2026.01.21 | GZJ 安全性 | by greenzonejapan

近年、アメリカを中心に「Δ8-THC」「THCP」「HHC」など、聞き慣れないカンナビノイド製品が急速に市場に出回っています。これらはしばしば「合法」「ヘンプ由来」「マリファナより安全」といった言葉とともに販売されていますが、実際のところ、その使用実態や健康影響についてはほとんど分かっていません。今回紹介する論文は、こうしたヘンプ由来の半合成カンナビノイド(semi-synthetic cannabinoids)について、誰がどのように使い、どんな影響を経験しているのかを、アメリカの成人カンナビス使用者を対象に調査したものです。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41335500/

・「半合成カンナビノイド」とは何か?
まず前提として整理しておきましょう。2018年、アメリカではいわゆるファームビル(農業法)によって、「Δ9-THCが0.3%以下の大麻=ヘンプ」が合法化されました。この法律は本来、繊維やCBD産業を後押しする目的でしたが、結果として思わぬ抜け道が生まれます。CBDなどの天然カンナビノイドを化学的に変換することで、Δ8-THC、Δ10-THC、 THCP、THC-O-acetate、 HHCといった、「天然にはほとんど存在しないが、THCに似た作用をもつ物質」が大量に作られるようになったのです。

これらはマリファナ(Δ9-THC >0.3%)ではない、かつヘンプ由来であるという理由で、連邦レベルでも州レベルでも明確な規制を受けていないケースが多く、事実上「グレーゾーン商品」として流通しています。

・どれくらいの人が使っているのか?
本研究では、過去1年以内にカンナビスを使用したアメリカの成人229人を対象にオンライン調査が行われました。その結果、驚くべきことに
・約45%(ほぼ2人に1人)が、過去1年以内に少なくとも1種類の半合成カンナビノイドを使用していた
と報告されています。

使用経験が多かった物質は以下の通りです。
THCP:24.4%
Δ8-THC:21.8%
Δ10-THC:14.0%
Δ7-THC:10.0%
THC-O-acetate:5.2%
HHC:3.5%
特にTHCPは、Δ9-THCよりも強力にCB1受容体に結合する可能性が示唆されている物質で、研究者の間でも警戒されています。

・どんな人が使いやすいのか?
統計解析の結果、半合成カンナビノイドを使いやすい人の特徴が浮かび上がりました。

① 若年層ほど使用率が高い
年齢が若いほど、使用経験がある確率が高くなっていました。新しい物質への好奇心や、SNS・オンライン販売との親和性が影響している可能性があります。

② カンナビス経験が豊富な人
生涯でのカンナビス使用回数が1000回以上の人では、使用経験のオッズが大きく上昇していました。つまり、「まったくの初心者」よりも、「慣れた使用者」が新しいカンナビノイドに手を伸ばしている構図です。

③ 食用・経口製品を好む人
普段、エディブルやチンキなど非吸入型の製品を好む人ほど、半合成カンナビノイドを使っている傾向がありました。

・なぜ使うのか?――理由は「合法性」と「好奇心」
初めて使った理由として多かったのは、「合法だから」「入手しやすいから」「好奇心」「普通のTHCより強い/弱い効果を期待して」といったものです。注目すべきは、「医療目的」よりも制度や規制を回避するための選択として使われている側面が強い点です。実際、成人向けマリファナが合法でない州のほうが、使用率が高い傾向も見られました。

・効果はマリファナと似ているのか?

参加者は、それぞれの物質について
効果の強さ
マリファナとの類似性
好ましさ
を評価しています。

・強さ
Δ8-THC:比較的「弱い」
THCP・Δ10-THC:むしろ「強い」と感じる人が多い

・類似性
全体としては「ある程度似ているが、完全に同じではない」という評価に集中していました。

・好ましさ
「すごく好き」「二度と使いたくない」と極端に分かれることは少なく、THCPやHHCがやや高評価、という程度でした。

・見過ごせない「有害事象」
すべての半合成カンナビノイドにおいて、使用者の半数以上が何らかの有害症状を経験していました。
(Δ7-THC:69.6%、Δ8-THC:52.0%、Δ10-THC:50.0%、THC-O-acetate:66.7%、THCP:55.4%、HHC:50.0%)
よく報告された症状は、不安、動悸、混乱、過剰な眠気、刺激感、吐き気、パラノイア様体験などで中には精神病様症状を訴えた人もいます。特に注目すべきなのは、同じ物質で「眠くなる」と「覚醒する」が同時に多く報告されるといった、予測不能な反応が見られた点です。

これは、製品ごとの成分差、用量の不明確さ、不純物の混入など、規制されていない市場特有の問題を強く示唆しています。

・この研究の限界と、それでも重要な意味
著者らは、この研究が少人数であり、自己申告に基づいた横断研究(因果関係は不明)であることを明確に認めています。それでもなお、この研究が重要なのは、「ほぼ規制されていない精神作用物質が、すでに広範に使われ、かつ有害事象も珍しくない」という現実を、初めて体系的に示した点にあります。

・おわりに
この論文は、「賛成か反対か」を論じる前に、何が起きているのかを、まず正確に知る必要があるという、ごく当たり前で、しかし今もっとも重要なメッセージを投げかけています。

 

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