CBDの塗り薬(クリーム、ロールオン、バーム)は効くのか?

2020.02.20 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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CBDの塗り薬(クリーム、ロールオン、バーム)は効くのか?
2020.02.20 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

昨今、日本でもさまざまなタイプのCBD製品を見かけるようになりました。オイルや電子タバコ(Vape)に次いで目立つのが、クリームやバーム、ロールオンなどの肌に塗るタイプの製品です。口に入れるよりもハードルが低いということで人気があるようですが、これが果たして、本当に効くのか疑問に感じたことはありませんか?

一般論としてCBD以外にも言えることですが、塗り薬の作用は局所に留まり、血中には移行しません。(抗ヒスタミン薬の塗り薬が湿疹には効いても、花粉症には効かないことを考えて下さい。)なので、てんかんや不安障害、統合失調症に対して、CBDの塗り薬が効いたとしても、それは薬理作用ではなく気持ちの作用(プラセボ効果)です。

一方で、皮膚や筋肉、神経由来の痛みや炎症に対しては、CBDの塗り薬は効果がある可能性がありますが、これまで科学的には明らかにされていませんでした。最近になり、この疑問に答える研究結果が相次いで報告されてきています。

一つ目は、ポーランドの大学病院の顎関節症専門センターからの報告です。

https://www.mdpi.com/2077-0383/8/11/1886/htm

顎関節症は20〜40代の若年層を中心に、人口のおよそ9〜13%が悩んでいるとされています。原因ははっきりとは解明されていないようです。この顎関節症に伴う顔面の痛みに対して、濃度 7%のCBDオイルを1日に2回、肌に塗ったところ、プラセボを使用した群と比較し有意に筋緊張の低下と痛みの軽減が得られました。

この研究では、60名の患者をランダムに二群に分け、CBDとプラセボを投与する二重盲検法と呼ばれるデザインが用いられています。質の高い研究と考えていいでしょう。CBDを投与した群では、痛みが 5.6 → 1.67 と約 70%改善したのに比べて、プラセボを投与したグループでは、5.1 → 4.6 と軽度の改善に留まりました。また表面筋電図という検査を用いて、咀嚼筋の筋緊張が測定され、CBD投与群では明らかに筋肉の緊張が緩んだという結果が得られています。

この結果から、CBDを皮膚に塗った場合も、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減する作用があると推測することができます。

 

ただし、この研究で用いられたのは 7%のフルスペクトラムオイル(シャーロッツウェブ:THCは非検出)で、食品として売られている濃度に近い製品です。日本で塗布剤として販売されているものは、この 1/3 〜 1/20 程度の濃度が一般的です。

日本で流通している塗布剤に近い濃度の製剤については、サンディエゴのスクリップス・マーシー病院の研修医である Xu DH らが貴重な報告を挙げています。

http://www.eurekaselect.com/177080/article

この研究では、抹消神経痛の患者さん29名を二群に分け、250 mg/90 ml = 0.3% の CBDオイルとプラセボを投与し、効果の違いを比較しました。すると、この研究でも CBD を使用した方が有意に痛みが軽減したそうです。これは日本で売っているバームやクリームの濃度でも薬理効果がある可能性を示しています。

塗り薬は、血中に移行しないので副作用の恐れが低く、安全な治療選択肢と言えます。筋肉や神経の痛みに対して、従来の湿布や塗り薬が効果がない場合には、使用を検討する価値があると考えられるでしょう。

今後、より大きな規模での研究が行われることが望ましいと思われます。

 

参考文献:

https://s3.amazonaws.com/rdcms-iasp/files/production/public/Content/ContentFolders/GlobalYearAgainstPain2/20132014OrofacialPain/FactSheets/Japanese%20Temporomandibular%20Disorders.pdf

 

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)

 

 

 

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