大麻による健康被害研究の決定版。ニュージーランド疫学調査から得られた知見をまとめます

2020年9月19日、ニュージーランドでは、大麻合法化の是非を問う国民投票が行われます。国家単位で大麻の合法化が国民投票にかけられるというのは世界で初めてのことです。

https://www.referendums.govt.nz/?gclid=Cj0KCQjwuJz3BRDTARIsAMg-HxVLuU0hzLD8pinPK0iDd1F_U8Cr7BlMm745YWoyRZtkShz2W_M2yHIaAlhpEALw_wcB

ニュージーランドでは現在、合法化賛成派と反対派が激しい論戦とキャンペーンを繰り広げています。

合法化反対の立場をとるのは、たとえば ニュージーランド医師会Family First New Zealand といった団体。『Say Nope to Dope(薬物に No と言おう)』というキャンペーンを展開しています。

対する賛成派には、 New Zealand Drug FoundationNORML New Zealand といった団体があり、また 1999年から 2008年までニュージーランドの首相だった Helen Clark の率いるシンクタンク、Helen Clark Foundation も合法化に賛成しています。New Zealand Drug Foundation が指揮を執って展開するキャンペーンが『On Our Terms(私たちのやり方で)』です。

合法化を巡るニュージーランド国民の意見はここまで、このような動きを見せています。

そんな中、投票に向けて、オタゴ大学の Richie Poulton 教授らが、国民の判断材料とするために、大麻に関する健康被害のデータをまとめたレビュー論文を発表しました。この内容が包括的かつ優れているため、今回、教授の許可を得て、日本語にしてご紹介します。(基本的には翻訳ですが、一部原文を省略・まとめています。)

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03036758.2020.1750435

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ニュージーランドにおける嗜好大麻の使用とその影響ー2020年国民投票に向けて

1:はじめに

大麻が人体に与える影響の研究において、実はニュージーランドは世界最高の優れたデータベースを有しています。というのはダニーデン研究とクライストチャーチ研究という、1970年代に始まった1000人規模の二つのコホート研究に登録された参加者の多くは、大麻の人体への影響を評価するに十分な量と期間、大麻を使用していたからです。このデータベースを用いて過去に行われた数々の解析結果をサマライズする形で、今回の論文は書かれました。

ダニーデン研究は、ニュージーランドのダニーデン近郊で 1972年 4月 1日から 1973年 3月 31日までに生まれた 1,037人(地域の全出生数の 91%)を、その後の人生の各段階(3, 5, 7, 9, 11, 13, 15, 18, 21, 26, 32, 38, 45歳)毎に、今日まで追跡しています。最新の調査でも登録者の 94%がフォローされており、93%が MRI 検査も受けています。調査対象群はニュージーランド南島の居住者の ”縮図” として、あらゆる社会背景の人々を含んでいます。人種的には主に白人に占められていました。

もう一つのクライストチャーチ研究は 1977年 4月から 8月の間にクライストチャーチ近郊で生まれた全人口の 97%に相当する 1,265人(男性 635人、女性630人)を、一生涯に渡って追跡するという研究です。これまでに出生時、生後4ヶ月、1歳から16歳までの毎年、および18歳、21歳、25歳、30歳、35歳、40歳時に調査が行われています。参加者の大半は民族的にはヨーロッパ由来ですが、13%はニュージーランド先住民(マオリ)でした。

 

2:研究デザイン上の長所

本調査には何点かの優れた特徴があります。一つ目は、両調査が前向き研究である点です。人間の記憶は不正確であり、長期間に渡る出来事(大麻の喫煙など)について、記憶を頼りに振り返って行う調査(後ろ向き研究)では、忘却や記憶の修正により、事実と証言が食い違う可能性があります。本調査では、長期にわたって“現時点での証言”を収集し続けており、これは科学的な信憑性が高いデザインと考えられています。

二つ目は、これらの調査対照者がニュージーランドの全人口の縮図を正しく反映している点です。たとえば、依存症外来に受診した患者のデータを収集することは簡易ですが、その調査によって得られた結果は、治療のために外来を受診した薬物使用者にしか当てはめることは出来ません。(薬物使用者のうち、病院を受診するのはごく一部であり、データに偏りが生じてしまいます。)本研究は特定の期間に生まれた全ての個人を対象としているため、サンプリングバイアスの影響を受けないと考えられます。

三つ目は、現時点までの追跡率が高いことです。長期間にわたる追跡調査では、どうしても追跡から漏れるケースが出てきます。問題はこの「失踪」がランダムに起きるわけではないことです。追跡が不能となる個人は社会的な困難に直面している場合が多いことが容易に想像できるでしょう。(Ex: ホームレスになる、犯罪行為により逃走する、反社会勢力への所属など)一定期間に生まれた人達の「全人生」を追跡することを目的とした研究では、これらの「困難の中にある人々」のデータも収集し続けることが重要です。実際に大麻依存症と診断される個人は、追跡調査を行うにあたって簡単に連絡が取れる 80%より、なかなか連絡がとれない 20%の中に多く存在しました(2倍以上)。ダニーデン・クライストチャーチ研究のいずれも、今日に至るまで重大な「失踪」を被っておらず、困難の中にいる対象者も追跡が出来ています。

四つ目は、カバーしている人生の時期が理想的という点です。一般的に大麻の使用は青年期に始まり、加齢に伴い減っていく傾向がありますが、両研究とも大麻使用における「導入期」、「使用増加期」、「維持期」、「減少期」の全てを追跡しています。その為に、大麻の短期・長期の影響を正しく評価することができます。

五つ目が多岐にわたる評価項目です。ダニーデン研究は身体的、精神的、社会的な側面について、クライストチャーチ研究は社会心理的側面について、多岐にわたる評価を行なっています。それぞれ独立して行われた二つの研究結果を合わせて解釈することにより、交絡因子の調整が可能となります。

 

3:研究デザイン上の短所

一方、研究デザイン上の短所としては

(1) マオリなどの先住民族のサンプル数が少ないこと
(2) 大麻使用の状況などに関する定性的なデータを含まないこと
(3) 使用していた大麻のクオリティやTHC含有量についてのデータが存在しないこと

が挙げられます。

 

4:大麻の喫煙率について

どちらの研究でも一部の個人は、早期から大麻を使用していました(調査対象の 15%が 15歳までに大麻使用を開始しています)。喫煙経験率は年齢とともに急速に増加し、20代の半ばまでに、71%・80%が一度は大麻を使用したと回答しています。20代の10年間に関して、過去一年以内に大麻を使用したと回答する割合は、どちらの調査でも45〜50%でした。使用率・依存率は三十代の前半から低下し始め、40代にかけて減少を続けました。

ダニーデン研究

32歳:機会喫煙率 37.2%. 常用率 8.8%. 依存率 5.4%

38歳:機会喫煙率 25.8%  常用率 6.1%. 依存率 4.1%

45歳:機会喫煙率 24.5%  常用率 6.1%. 依存率 2.1%

クライストチャーチ研究

30歳:機会喫煙率 33.4%. 常用率 11.0%. 依存率 2.5%

35歳:機会喫煙率 22.4%. 常用率  7.8%. 依存率 1.6%

40歳:機会喫煙率 23.0%. 常用率  8.9%. 依存率 1.4%

 

5メンタルヘルスへの影響

A:依存症の診断について

大麻の使用率が最も高かった 20代において、大麻依存症の基準を満たす大麻使用者の割合は、人口の 4〜10%(大麻喫煙者の9〜20%)程度でした。大麻依存症とは、頻繁な大麻使用によって引き起こされる望ましくない行動様式の変化を指す語であり、以下のような項目を含みます。

a:意図したより大量、または長期間に使用してしまう
b:使用をやめようとするけれど上手くいかない
c:大麻を入手、使用するため、復帰するために多くの時間を費やす
d:大麻への強い渇望がある
e:大麻の使用が原因で仕事や生活に支障が出る
f:社会的、対人的な問題が生じて悪化しているにも関わらず使用を続ける
g:大麻のため、他の活動が疎かになる
h:物理的に危険な状況でも大麻を継続的に使用する
i:大麻によって健康被害が出ているとわかっても使用を続ける
j:極端な耐性がついてくる
k:離脱症状が出現する

興味深いことに大麻経験率は、30代以降はほぼ上昇しませんでした。言い換えると、大麻を使用する人は 20代までに開始し、30歳を過ぎて大麻に出会うことは滅多にないと言えます。これはアルコールでも同じ傾向が示されました。

B:大麻とハードドラッグの関係

これまでの調査により、大麻とその他の違法薬物の使用の関連が明らかになっています。

21歳までに参加者の 70%が大麻の使用経験があり、26%がその他の違法薬物の経験がありましたが、大麻の使用頻度が高い人の方が、その他の違法薬物の使用率が高いという結果が得られました(どちらも経験がある人の大半は、まず大麻を使用しています)。

しかし、大麻使用者の多く(63%)は21歳の時点で、その他の違法ドラッグの使用経験がないことは特筆すべきです。また大麻とその他の違法薬物の関連性は特に思春期に強く、それ以降は結びつきが低下する傾向があります。クライストチャーチ研究とその他の2つのオーストリアでの疫学データを分析した研究では、17歳の時点で毎日大麻を使用していた群は、そうでない人に比べて、30歳までにその他の違法薬物に辿り着く割合が8倍高いと報告されました。アルコール使用や経済状況などの交絡因子の調整後も、大麻とその他の違法薬物の間には相関関係が認められました。大麻使用者がその他の薬物に辿り着くメカニズムに関しては、薬物を介した人間関係がゲートウェイになる可能性と、大麻の神経生理学的影響の可能性の双方が提唱されています。

C:統合失調症様の精神障害

両研究とも、大麻使用者では急性精神症状・精神障害のリスクが高まること、特に思春期から使用開始し成人期まで継続した場合において顕著であることが示されました。たとえば、ダニーデン研究の参加者では、早期に大麻使用を開始した個人では、一度も大麻を使用していない個人より、26歳までに精神障害を患うリスクがおよそ2倍でした。クライストチャーチ研究では 1.5倍でした。タバコ、アルコール、違法薬物の影響を除外してもなお、リスク上昇は認められました。

精神障害者が自己治療の目的で大麻を使用しているという「因果関係の逆転」については、本研究では除外可能でした。決定的に重要なことは、全体では思春期の大麻使用とその後の精神障害の発症リスクは決して高くはないことです。一部の遺伝的な脆弱性を持つ人々が早期に使用を開始した場合のみリスクは高まるようです。

この特殊な関係性が、大麻使用が増えているにも関わらず、精神障害が増えない理由でしょう。

D:その他の精神障害

大麻使用と不安障害やうつなどの精神疾患との関係性はより脆弱でした。

2012年にクライストチャーチ研究とその他の3つの疫学調査の結果を総合したところ、大麻の使用量が多いほど、うつ症状が強いという相関関係が示され、特に 10代で顕著でした。これが大麻⇒うつなのか、うつ⇒大麻なのかは判別不能でした。またクライストチャーチ研究からは、習慣的大麻使用と自殺企図に相関関係が認められました。この関係は14〜15歳に最も強く、20〜21歳以降では消失しました。加齢と共にリスクは低下するようです。また男性においてのみ、大麻使用開始が早ければ早いほど、自殺願望が早期に発生するという関係が認められました。

 

6身体的な健康への影響

A:呼吸器系への影響

ダニーデン研究の結果から、大麻の常用は肺機能に影響を与えることが判明しました。

21歳時点で大麻依存症と診断された群では、喘鳴、労作時息切れ、胸部の圧迫感を伴う夜間覚醒、起床時の痰の増加が認められました。一秒率 [*] が 80%以下の人の割合は、大麻使用者では 36%、非使用者では 20%でした。この影響は5年後にも残存し、容量反応関係が認められました。つまり大麻喫煙量が多いほど、肺機能に大きな影響がありました。大麻の肺機能への影響はタバコの障害の機序とは異なり、双方の影響は独立しているようです。興味深いことは、大麻使用に伴う咳、痰、喘鳴の増加は減煙・禁煙によって、非喫煙者と同程度のレベルにまで低下する点です。

[*] 呼吸機能検査の項目の一つ。力いっぱい息を吐き出したときの空気量(努力肺活量)のうち、最初の一秒間に吐き出された量(1秒量)の割合。この数字が低いことは呼吸機能の低下を示す。

B:口腔衛生への影響

ダニーデン研究の結果、32歳時点で、大麻喫煙者には歯周病と診断される割合が高いことが明らかになりました。この関係は、タバコの喫煙や性別、歯科受診の頻度などの交絡因子による調整後も存在しました。非使用者と比較したリスクは、2〜3倍でした。この関係は 38歳時点でも同様でした。

C:心血管系への影響

上記の歯周病のリスクを示した論文はまた、その他の代謝疾患のリスク(過体重、肥満、高血圧、脂質バランス、炎症)と大麻の関係も評価しています。追跡が完了している現時点(40代半ば)までの範囲では、歯周病以外に大麻と関連するリスクの増大は認められていません。一方でタバコの喫煙は、26歳と38歳の調査時点で、慢性炎症や代謝悪化などの影響をもたらしています。

D:認知機能への影響

ダニーデン研究の結果、40歳までの時点で大麻喫煙と認知機能には相関がある事が判明しました。思春期から大麻を使用し始め38歳まで継続した群では、IQに換算して最大8点ほど低値でした。この変化は大麻の使用を辞めた後も非可逆的である可能性が示唆されました。これらの結果から、研究者は、大麻が脳の発達に与える影響を考慮し、10代での大麻使用を控えるべきと警告しています。(なおこの報告の後に、再現性の確認を試みた調査はそれらしい結果を提示出来ておらず、交絡因子の除外も十分ではないとのことです。)

E:教育への影響

クライストチャーチ研究とその他のオーストラリアでの二つの疫学調査のデータを合わせて解析した結果、15歳以下で大麻を使用し始めた群と比較し、18歳まで大麻を使用しなかった群では、高校を卒業する割合が2倍でした。また早期の大麻使用者は、大学へ進学しない傾向がありました。経済状況などの交絡因子での調整を行った後にも、大麻の早期使用と進学率の低下には強い相関関係が認められました。また大麻の使用量と進学に関しては、量ー反応関係が認められました。さらに大麻と低学歴に関しては、「逆の因果関係」は否定されました。つまり学業を早期に切り上げることは大麻の喫煙増加には繋がりませんでした。早期かつ多量の大麻使用が学歴低下につながる機序には、様々な理由が考えられます。大麻は脳の発達に影響を与え、意欲や認知機能を低下させるのかもしれません。もしくは、早期に大麻に出会う種類の若者には、様々な社会的接点がもたらされ、そのことが非典型的な行動を促し、進学という選択を遠ざけるのかもしれません。経済的には長期かつ慢性の大麻使用者は、非使用者と比較して、週あたりの収入が NZ$273 低いという結果が得られました。

F:雇用への影響

ダニーデン研究は、大麻の常用が社会・経済的地位の低下と関連していると示しています。大麻依存と診断された人々には、経済的困窮、生活保護受給、クレジットカードの不渡りなどの問題が多く見られ、職場での問題や人間関係のトラブルも多かったようです。大麻使用量・依存期間と社会的困窮には量ー反応関係が認められました。

興味深いことに、大麻依存が社会的困窮に繋がる程度はアルコール依存より強度でした(職場や人間関係のトラブルでは同じような振る舞いが観察されました)。これは従来考えられている知見(大麻はアルコールより安全)と矛盾するものです。我々の調査は社会的、経済的達成だけに注目したものであり、その他の要素に関しては違う結果が得られるかもしれません。また大麻依存症はアルコール依存症と比較しまれであり、社会全体への影響としてはアルコールの方が大きいと考えられます。クライストチャーチ研究でもダニーデン研究と同じく、14〜21歳時点で大麻の使用量が多い個人(21歳までに 400回以上使用)は、25歳時点で就業率と収入が低く、生活保護受給率が高率でした(失業:3.3倍 生活保護:4.9倍 所得:76%)。

G:運転への影響

クライストチャーチ研究は 21〜25歳の薬物影響下での運転と事故に関しての調査を行っています。驚くべきことに、大麻の影響下での運転の申告は、飲酒運転の 2.5倍多かったのです。大麻酩酊下での運転は、事故のリスクが 2.25倍高く、交絡因子での調整後も 1.4倍でした。このことから若者においては、大麻の酩酊下での運転は大きな社会的課題と言えるでしょう。

H:法適用の偏りについて

クライストチャーチ研究では、大麻関連の法律により、21歳までに参加者の5%が逮捕され、3.6%が有罪判決を受けています。ヘビーユーザーに関しては 25%が逮捕・有罪判決を受けています。研究者が、マオリ(先住民族)の逮捕率について調査したところ、同じレベルの大麻使用の程度であっても、マオリの方が法の裁きを受ける割合は白人の3倍でした。このことから、大麻関連の法律の運用は不平等であると研究者は指摘しています。また、逮捕や訴追は大麻使用を減らさないこともまた研究者により指摘されています。違反者の 95%が逮捕後も以前通りかそれ以上の頻度で大麻を使用しています。このことから、逮捕は大麻使用を減らさないことは明らかです。

I:結論

現在、中年期に差し掛かっているニュージーランド人の大半が、人生のどこかの段階、特に10代後半から20代にかけて大麻を使用していました。大麻使用者の大半は咎められることもなく、深刻な健康・社会被害とも無縁でした。

大麻使用にまつわるリスクは

(1) 10代の早期から使用開始
(2) 使用頻度が高い
(3) 依存している

上記のいずれかに当てはまる場合に限られていました。

これらに当てはまるごく一部の人々は、以下のようなマイナスの影響を被っていました。

a. 精神機能障害
b. 認知機能低下
c. 呼吸機能と口腔環境への影響
d. 学業、雇用と就業、生活保護受給、逮捕投獄などの社会的影響

しかし、これらの影響は全て、大麻が違法であった時期にもたらされたことを意識することは非常に重要です。大麻を違法にしておくことは、使用者を大麻から遠ざけることにつながらず、逮捕投獄も使用減少にはつながりません。さらに薬物を違法にしておくことは、使用者を社会的・医療的支援から遠ざけます。厳罰を処す国では仮に法律が改変されれば、医療へのアクセスが増えると見込まれています。さらにこのレビューで述べたように、ニュージーランドの大麻取締法は人種的な観点から偏りをもって運営されています。著者らは四半世紀に渡って、大麻使用に伴う健康被害の問題は司法問題でなく健康問題として扱われるべきで、科学に基づいた予防と早期治療の重要性を説き続けています。例えば、年齢ごとに適切な教育を施すことが考えられますが、これは大麻が違法であるがゆえに実現していません。

今回、ニュージーランド政府は国民投票において、単純な二択を用意しました。

A:現状を維持する
B:完全合法化 

の二つです。

現在の大麻登録管理法の草案は以下の目的でデザインされています。

1. 大麻の違法供給を制限すること
2. 20歳以上のみに使用を制限し未成年を保護すること
3. 大麻供給業者にライセンスを発行しTHC濃度、広告、販売方法を規制すること
4. 大麻の公衆衛生上の問題を伝え、使用者を保護すること
5. 大麻関連で困っている人が医療・社会サービスへアクセスしやすくすること

現在の法案は THC濃度の上限や、企業の利益誘導に繋がらないように配慮されていますが、価格設定や大麻関連前科の抹消の有無に関しては未定です。

著者は有権者に、最低限、単純使用に対する罰則の撤廃に関して検討してもらいたいと考えています。なぜなら、犯罪歴は人生のチャンスを著しく損ない、雇用に影響をもたらし、21世紀の世界において移動の自由を減ずるからです。犯罪歴は差別、偏見、社会的制裁に直結します。

また、理論的には、ミニマリスト的スタンス[訳注:民間の活動に対する政府の関与を最低限にすべきという立場]をとれば、第3の選択肢があったかもしれません。

それは

C:全面合法化には反対だが単純使用は非犯罪化する

という選択肢です。この選択肢にはいくつかのメリットがあります。

1. 一般的な行動(大麻の喫煙)で人生の可能性が制限されるリスクがなくなる
2. カナダやUSの各州、ウルグアイなどの先進地域の政策の影響を観察、判断する時間的な猶予が生まれる
3. 法律の変化によって使用量や乱用率に大きな変化がないことを確認できる
4. 使用増加に伴うリスクの増加に対応する猶予が得られる
5. 制度設計について詳細な議論を行なう猶予が得られる
6. 大麻に対する現実と思い込みをすりあわせる時間が得られる

合法化が選択されたとして、政府には注意深い運用を求めたいと思います。合法化された世界ではアルコール業界のような十代に向けたポップな商品開発が予想されます。この点について研究から得られるメッセージはシンプルです。商業主義から子供達が守られることが最優先されるべきでしょう。

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さて、あなたはこの論文を読んで Yes と No のどちらを選択するでしょうか。

著者の Poulton 教授は、「私はこれまで四半世紀近くにわたって、健康関連のさまざまな政府委員会に、大麻の使用とその害についてのエビデンスを提示してきました。そしてその都度同じことを言ってきました——つまり、大麻に関連する害は健康問題として扱われるべきであり、法的に裁かれるべき問題ではない、ということです」と言っています。

投票まであと2か月あまり。仮にニュージーランドで大麻が合法化されれば、アジア太平洋地域はもとより、世界中に大きな影響があることでしょう。投票の結果を注視したいと思います。

 

 

文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)
文責:三木直子(国際基督教大学教養学部語学科卒。翻訳家。2011年に『マリファナはなぜ非合法なのか?』の翻訳を手がけて以来医療大麻に関する啓蒙活動を始め、海外の医療大麻に関する取材と情報発信を続けている。GREEN ZONE JAPAN 共同創設者、プログラム・ディレクター。)

 

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