第1回有識者会議を分析する

2021.02.10 | 国内動向 | by greenzonejapan
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第1回有識者会議を分析する
2021.02.10 | 国内動向 | by greenzonejapan

日本の大麻政策の今後を話し合う、有識者による検討会議の第1回が 2021年1月20日に開催され、議事録が公開されました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000031ehd_00001.html

メンバー

有識者12名のうち、10名の氏名が明らかにされました。所属は以下の通りです。

鈴木勉:湘南医療大学 薬学部 特任教授 警視庁大麻撲滅キャンペーンに出演
藤野彰:公益財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センター理事長 元国際麻薬統制委員会(INCB)事務局次長
太田達也:慶應大学法学部教授 元警察大学校、警察庁、法務省勤務。
堀尾貴将:弁護士 元厚労省医薬・生活衛生局勤務
小林篤子:読売新聞社会部・論説委員
和田清 :埼玉県立精神医療センター 依存症治療部 精神科医
嶋根卓也:国立精神・神経医療研究センター 疫学者
舩田正彦:国立精神・神経医療研究センター 神経薬理学者
松本俊彦:国立精神・神経医療研究センター 精神科医
岡﨑重人:川崎ダルク施設長

匿名1: 麻薬製造業者関係者(製薬会社)
匿名2: 自治体関係者

会議進行

会議の座長には、鈴木勉氏が選ばれました。また座長代理には藤野彰氏が指名されました。

資料から読む厚労省のプレゼンテーション

冒頭に厚労省の監視指導・麻薬対策課によるプレゼンテーションがあり、資料はウェブサイトにアップされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000723426.pdf

こちらの資料から、同課が議論を誘導しようとしている方向を伺うことができます。

(1) 規制・厳罰ありきの議論

第一印象で感じたのは、取締の正当性を前提とした資料となっているということです。

1章は「薬物対策の現状と課題」と題されています。この国の最大の課題は、大麻での逮捕者の増加が抑止力となっていない点でしょう。しかし本資料では、刑罰を科す事が解決策にはならないのでは? という根本的な疑問に触れることはありません。

なおこのスライドからマトリの構成員が全国に 300名弱いること、2021年4月に組織改編が行われ、新たに密輸対策課が作られる事が決定していることがわかります。2020年10月の時点でマトリの増強は報道されており、これは使用罪創設ありきの動向のようにも見えます。

※ 大麻の健康被害の情報が古く、有害性に誇張がある

薬物の有害性比較のデータは 2010年の Lancet に掲載された以下の表が国際的なスタンダードと考えられていますが、なぜか本会議の資料では平成10年に作られた国内の資料が掲載されています。

この表には酒やタバコなどの合法ドラッグが含まれていません。大麻と酒・タバコとの比較を頑なに避けているように見えます。

(2) 大麻の医療用途に関してはなるべく言及したくない?

規制薬物を紹介するスライドにも、監麻課の意図が透けて見えています。コカインやヘロインのスライドには、医療用途として使用される点が明記されているのに対して、大麻のスライドでは、「宗教儀式で使用される」「ハシシの語源はアサシン」などの雑学的知識がスライドのスペースを埋め、世界 50カ国で医療使用されていることは記載されていません。


また「大麻から製造された医薬品」のページでも CBD製剤である Epidiolex だけが紹介され、THC を含む Sativex への言及はありません。THC が薬として役に立つという事を監麻課は頑なに認めたくないように感じられます。

(3) 国際動向情報の偏向が強い

2020年末の国連による大麻のカテゴリ変更については言及されていますが、規制緩和に賛成した国の意見は無視し、反対した国の意見だけがスライド内で紹介されています。

また「大麻を合法化した国への国連の見解」として、2020年の規制緩和より前の 2018年資料を引用し、国連が大麻を解禁した諸外国を非難しているかのような印象を与えています。なおこの国際麻薬統制委員会(INCB)という団体は 2020年にはハームリダクションを求める会長声明を出していますが、その点には触れていません。

本来であれば、元 INCB 事務局次長である藤野氏は INCB の態度の変化について言及すべきですが、議事録にもそのような指摘は認められませんでした。

(4) 使用罪を創設したい意図が透けてみえる

薬物犯罪の法定刑の一覧というスライドでは、大麻にだけ使用罪がない事が強調されています。

(5) CBDへの規制も検討している?

大麻取締法上の大麻について、というスライドでは「樹脂の定義が定められておらず、規制対象が不明瞭との指摘がある」と書かれています。これは CBD規制への布石のように見えます。

議事録から感じられること

厚労省から上記のプレゼンが行われた後に、それぞれの委員から自己紹介を含めた簡単なコメントや質問が挙げられました。

個人的に最も気になったのは、医療大麻をカンナビノイド医薬品に限定して話を進めようとしているように感じられる点です。厚労省のプレゼンテーションに登場したエピディオレックスは米国や欧州で処方箋医薬品としての承認を得ており、これに関しては容認する姿勢が感じられます。

しかしこれは医療大麻におけるごく一部に過ぎません。世の中で流通している医療大麻の大半は、食品や代替医薬品として流通しています。例えば、シャーロット・フィギーが使用したことで世界的な知名度を得たシャーロッツ・ウェブはヘンプ由来の食品扱いですが、医薬品として非常に高いポテンシャルを有しています。全草を含め、このような製剤にも門戸が開かれるような議論を期待します。

また全体的に「CBD は医療成分、THC は乱用物質」のような見解の発言が目立ちました。医療大麻における最も重要な成分は THC であることに異論の余地はありません。この点に関しても、偏見を排して THC の医療的な可能性にも言及して頂けることを切に願っています。

文責:正高佑志(Green Zone Japan代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)

 

 

 

“第1回有識者会議を分析する” への1件のコメント

  1. I am grateful for the reports made by “greenzone Japan”, I have followed and reflected on the medicinal use of cannabis in the country. I am Brazilian and in Brazil we have several groups of studies and publications on the subject, these discussions here in Japan also call my attention. I have lived here since 2019 and have been informing the Brazilian community in Japan about the possibility of the medical use of cannabis. Please continue with this very important informational work.

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