大麻は依存になるの?

2021.02.18 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
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大麻は依存になるの?
2021.02.18 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan

大麻に反対する人々が大麻依存症の危険性を訴える一方で、大麻に肯定的な人々からは大麻には依存性がないという意見も聞こえてきます。これはどちらも偏った意見です。

身体依存と精神依存の違い

依存とは、「やめようと思ってもやめられない状態」を指す言葉です。このうち薬物依存は身体依存と精神依存という二種類に分けて語られます。

身体依存とは、薬物を絶った時に離脱症状と呼ばれる身体症状を伴う依存です。アルコール依存症の方が、お酒を飲んでいないと手が震えるというのは離脱症状の一つですし、オピオイド系薬物には嘔吐、発汗、震えなどの離脱症状が認められます。一方の精神依存とは、身体症状は伴わないけれど精神的な影響はある状態を指します。タバコが切れるとイライラするというのは精神依存症状です。

大麻には身体依存性はありませんが、精神依存性はあります。大麻がなくなると眠れないとか、逮捕されるリスクが高いにも関わらずやめられないというのは精神依存と言って差し支えないでしょう。

大麻依存の割合

2001〜2005年にかけて合衆国で行われた大規模調査では、初めて大麻を吸った人が依存状態になる確率は 8.9% と考えられています。ちなみにタバコの場合は 67.5%、お酒の場合は 22.7% が最終的に依存状態に至ると結論されています。
https://www.greenzonejapan.com/2020/12/18/nesarc/

また1970年代からニュージーランドで行われた疫学調査では、20代の頃、依存症の定義を満たす割合は住民の4〜10%(大麻使用者の9〜20%)程度でした。しかし加齢に伴い大麻を使用する人の数は徐々に低下していき、40代で大麻を吸っている人は 20%程度、依存率は住民の 1.4〜2.1% 程度に低下しています。つまり、歳を取るにつれて大麻依存の状態から抜け出す人が多いということです。
https://www.greenzonejapan.com/2020/07/06/nz_referendum/

依存になるのは大麻のせいか?

そもそも、依存になる原因はどこにあるのでしょうか?

何の問題もない人が、薬物の快感にのめり込む事で依存症に陥ってしまうという、薬物教育にありがちなストーリーは事実を正確に表していません。大麻の依存率を 8.9% とした上記の研究では、どのような人が依存に陥りやすいかも分析しています。その結果、所得が高い人ほど、薬物の使用経験が多いにもかかわらず依存症になる割合は低い事が示されました。また生涯未婚の人は依存症になりやすい傾向があることもわかりました。つまり依存するほど大麻にハマるのは、目を背けたい問題があるからではないかと考えられます。

また依存の対象は薬物だけではありません。ギャンブル依存。買い物依存。Sex 依存。最近ではゲーム依存症が精神科の病名として新たに登録されました。依存体質の人は、仮に大麻をやめても他の何かに依存する可能性が極めて高いでしょう。極論ですが、何にも依存せずに生きていける人などいないのかもしれません。

大麻に依存するデメリットは?

もしそうであるなら、依存の対象はなるべく害の少ないものである方が望ましいでしょう。ニコチン依存症は心筋梗塞や脳梗塞、様々ながん、COPD などの肺疾患の原因となります。アルコール依存症の患者さんの平均寿命は 50歳程度と言われています。ギャンブル依存の場合は生活が経済的に立ち行かなくなる可能性が高いでしょう。

比べてみると大麻以外の依存症に関しては、逮捕される事以外にそれほど大きなデメリットが認められません。実際に、アメリカ合衆国では大麻に対して寛容な州の方が大麻使用者は多いにも関わらず、大麻依存症と診断される人の数が少ない事が明らかになっています。
https://www.greenzonejapan.com/2020/04/18/shogai/

これは違法ではない地域では、そもそも止める必要がないため、やめたくてもやめられない状態というのが発生しにくいということでしょう。

皆さんが気がつかないうちに依存症になっている物質に、コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインがあります。コーヒーを飲まないと一日が始まらないという方は多いでしょうが、これは精神依存です。重要な点はカフェインは長期間使用しても身体への害は少なく、また合法である事です。仮に明日から「カフェイン取締法」が作られたら、日本中にカフェイン依存症患者が生まれることになるでしょう。

まとめ

大麻には精神依存性が認められますが、その程度はアルコールやタバコなどの合法ドラッグと比較し高いとは言えません。また数々の依存対象のうち、長期間使用した場合の有害性は小さいと考えられています。仮に大麻を合法化しても、依存症と診断される人の数が劇的に増えることはなく、むしろ減少する傾向があると海外の研究では示されています。

文責:正高佑志(Green Zone Japan代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)

 

参考:https://www.projectcbd.org/ja/medicine/cannabis-addictive

 

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