日本の年金機構が海外大麻企業の上位株主に

2021.03.31 | 国内動向 経済 | by greenzonejapan
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日本の年金機構が海外大麻企業の上位株主に
2021.03.31 | 国内動向 経済 | by greenzonejapan

2021年3月19日、ブルームバーグにより日本の年金機構が大麻企業に投資している事実が報道されました。[1]

我々が払った年金は、銀行の口座に放置されているわけではありません。厚生労働省が所轄する年金積立金管理運用独立法人(GPIF)という企業によって運用され、国債や株式に投資されています。現在、株への投資はポートフォリオの半分を占めます。2014年までは70%以上を国債で保有していたことを考えると、攻めの運用が行われていると言えるでしょう。(ちなみにこの運用はコロナ禍の変動の煽りを受け、2020年1~3月期だけで17兆円の巨額損失を被ったことが報道されています。[2])

2020年夏にGPIFが開示した投資先一覧の資料[3]によると、キャノピーグロース、クロノスグループ、及びオーロラ・カンナビスなどの大麻関連企業に8000万ドル(約87億円)の投資を行なっている事が明らかになっています。(筆者が調べた限り、GW製薬を買収したジャズ製薬にも投資しています。)これらはGPIFが運用する総資産(160兆円)の中ではごく一部に過ぎませんが、投資される企業側にとっては大金です。実際にオーロラ・カンナビスにとっては、日本年金機構は10本の指に入る大株主です。

しかし、これはGPIFが個別銘柄として大麻企業の株を購入しているわけではないようです。GPIFはインデックス・ファンドに分類される投資信託に資金を預けています。インデックス・ファンドは日経平均やダウ平均指数などの市場平均指数と連動するように様々な企業株に分散投資を行っています。これらのインデックスファンドがポートフォリオの中に大麻関連企業の株式を含んでいるため、間接的に大麻企業の株式を所有することになったとGPIFは説明しています。

これは言い訳がましく聞こえますが、公的な基金の運用に関しては、ESG指針というものが存在しています。[4]ESGは環境、社会問題、企業統治の略であり、環境問題を悪化させる企業や社会倫理的に問題のある企業への投資をしないことを明記した投資運用の指針です。これにはGPIFも署名していますので[5]、大麻企業に投資を行なったということは、これらの海外大麻産業が社会倫理に反していないとGPIFは判断したということでしょう。繰り返しになりますが、GPIFを管轄しているのは厚労省です。

大麻企業に投資を行なっているのは年金機構だけではありません。日本人の個人投資家では、元サッカー日本代表の本田圭佑氏がカリフォルニアの大麻企業であるNabisに出資していることが2019年に公開されています[6]。また皆さんも外資系証券会社に口座を作れば株式市場を通じて、大麻関連企業の株を所有することができます。

(写真:国内外資系証券会社(IG証券)で購入できる大麻企業株の一部。)

ご存知の通り、国内では少量の大麻を所持しただけで逮捕されます。また大麻取締法の国外犯規定が存在し、海外でも日本人はみだりに大麻を所持することは違法とされています。外務省はホームページで合法地域でも決して手を出さないように警告していますし[7]カナダで合法化された際に、地上波が“日本人留学生は使用すると違法“と警告していたのを記憶している方もおられるはずです。その際のワイドショーでは、関連企業への投資も禁止とフリップが提示されていました。

カナダ合法化の際の日本の報道内容。

実際には大量の大麻を売買する海外法人の筆頭株主になり、そこから巨額の利益を得ていても問題にならないというのが現状です。むしろ年金機構という厚労省管轄の公的機関が率先して投資を行い、日本の年金受給者が恩恵に預かっている事が明らかになりました。(個人投資家ならさておき、GPIFのような専門機関がインデックスファンドの所有する個別銘柄を把握していなかったというのはあり得ない話でしょう)

国内外の著しいルールのずれは多くの矛盾を生み、それは政府や行政への不信へと繋がります。このような奇妙なねじれが速やかに解消されることを願います。

参考文献

1:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-18/QQ6LK8DWX2PT01
2:https://www.asahi.com/articles/ASN436S48N43UTFL004.html
3:https://www.gpif.go.jp/operation/pdf/unyoujoukyou_2019_14_735988.xlsx
4:https://squareup.com/jp/ja/townsquare/esg-investing
5:https://www.gpif.go.jp/investment/pdf/signatory-UN-PRI.pdf
6:https://www.prnewswire.com/news-releases/california-cannabis-distributor-nabis-raises-over-5-25-million-300834864.html
7:https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/oshirase_yakubutsuchuui.html

https://www.freepik.com/photos/background. Background photo created by pvproductions

※執筆にあたり杉村勇輔氏に助言を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

文責:正高佑志(Green Zone Japan 代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)

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