大麻使用罪を巡る動向と論点整理
止めるためにできること

2021.06.01 | 国内動向 | by greenzonejapan
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大麻使用罪を巡る動向と論点整理
止めるためにできること
2021.06.01 | 国内動向 | by greenzonejapan

大麻使用罪の動向

2021年1月20日より開始された有識者会議は大詰めを迎え、5月28日に第7回会議が開催されました。大麻使用罪の是非については賛成が多数を占めていますが、松本俊彦委員、岡崎重人委員、嶋根卓也委員の3名が反対しています。

大麻の安全性についての議論の中で、Green Zone Japanと国立神経精神医療研究センターが共同で行ったアンケート調査の結果が引用されました。ご協力頂きました皆様に、改めて御礼を申し上げます。議論の詳細に関しては、Buzzfeedの岩永直子記者の記事をご参照ください。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/cannabis-kentoukai-0528

次回の最終会議でこれまでの議論をまとめた上で、主催の監視指導麻薬対策課は報告書を提出する予定であり、この報告書を受けて国会議員の間で審議されることになります。

しかし実は遡ること1月、自民党の議員の間で“大麻事犯撲滅PT“というプロジェクトチームが立ち上がっていたことが明らかになりました。

https://ameblo.jp/hase-hiroshi/entry-12650760713.html

時期的には第一回有識者会議が始まる直前であり、有識者会議の招集と同時に動き出したと考えるのが自然です。PTメンバーである馳浩議員が自身のブログで“大麻使用に罰則を作ることが当面の目的“と書いている通り、使用罪創設の結論ありきで一部の自民党議員たちが動き出していることになります。こちらでも監視指導麻薬対策課がプレゼンテーションを行なっているようです。

これら一連の流れを見ると有識者会議内での議論の如何にかかわらず、使用罪創設に向けた議論は自民党内で行われ、2022年1月〜6月の通常国会で法案が提出される可能性が高いでしょう。この動向を阻止するためには、年内に反対の世論を盛り上げられるかが重要になってきます。

なぜ大麻使用罪を作ってはいけないのか?

我々はここまで精力的な活動を行ってきましたが、現時点では世論への訴求力が十分ではないと感じています。大麻を見たこともない方にとって、大麻の使用罪を作るということに関心を抱いてもらうことは簡単ではありません。“自分が逮捕されたくないから反対“という主張は一般層にとっては逆効果の可能性があります。私が考える使用罪に反対する論拠として有用なものは以下の3点です。

1:大麻の有効活用を邪魔してはならない(医療大麻患者の観点)

現在、サプリメントとして流通しているCBD製品は有識者会議でも規制緩和の方向で話し合いが進んでいますが、これらにも微量なTHCは含有されています。仮に尿中からTHCが検出されたら大麻使用罪に該当するということになれば、合法なCBD製品を使用しているだけで逮捕される状況が発生し得るでしょう。CBDはその他の治療で効果の乏しいてんかんの子供たちの特効薬として利用されていますが、大麻由来ということで使用を控える方が多くおられます。使用罪創設によって更なる不安が煽られ、本来救われるべき患者が治療にアクセスできない事態が生じることは想像に難くありません。

またTHCに関しても、幅広い疾患に対して医薬品としての有用性が認められています。THCへの厳罰方針を維持することはスティグマ(負の烙印)を強化し、将来的に多くの患者を治療から遠ざけることになります。

2:大麻をやめさせる上で逮捕はやりすぎ、逆効果(大麻使用者の観点)

“北風と太陽“というイソップ寓話が示す通り、処罰することは薬物問題の本質的な解決につながらないことが過去の経験から明らかになっています。本当に薬物をやめさせたいのなら、行うべきは薬物使用の背景となっている“生きづらさ“に対して手を差し伸べることであり、そのような政策概念はハーム・リダクションと呼ばれ、先進国の薬物政策では主流となりつつあります。実例としてポルトガルは21世紀初頭に薬物での逮捕を止め、薬物問題は劇的に改善しました。2020年にはオレゴン州でも薬物の非犯罪化が決定しました。日本でも未成年のタバコ喫煙で逮捕するとなれば、多くの人は直観的にやりすぎだと感じるでしょう。大麻に関してもそれは同じです。

3:取締利権を撤廃し、より大きな産業機会へ(産業の観点)

世界的に解禁の方向へ舵を切る中、日本だけが取締を強化しようとしている背景には、取締利権の問題があります。覚せい剤の検挙者が低下するなかで、大麻まで合法化されたら自分たちの仕事がなくなることを危惧する“マトリ“を管轄する監視指導麻薬対策課が使用罪を導入しようとしているのは明らかな利益相反です。

全国に300名弱のマトリ職員の雇用を維持するために、日本における大麻産業という巨大なビジネスチャンスが損なわれていると言えるでしょう。日本国内で我々が政府と合法化闘争をやっている間に、イスラエルでは産学官が一体となって、大麻の産業的可能性を追求しています。いずれ海外からの圧力により市場を開くことになるのであれば、国内の産業育成に早期に舵を切るべきではないでしょうか?

使用罪創設を止めるためにできることは?

使用罪創設を止める上で重要なのは、立法府のメンバーである国会議員に理解を促すことであり、そのための王道的な手段の一つ目が世論を盛り上げることです。各人がSNSを駆使し、正しい情報を拡散することはその礎となります。

また重要なことは、自分自身のタイムラインだけでなく、ネット上の不特定多数の目に触れる場所に意見を反映させることです。例えばYahooニュースのコメント欄や大麻について発言した著名人のSNSのリプライは、普段大麻問題に関心がない層の目に触れやすい環境です。そのような場所に、上記の1~3のような趣旨のコメントを書き込むことで、使用罪を作ることは馬鹿げているという空気を形成することができます。

世論形成と並ぶ、もう一つの手段が国会議員に直接話を聞いてもらうことであり、そのための働きかけはロビー活動と呼ばれます。皆さんが何かの繋がりで国会議員さんに15分もらえるなら、なぜ使用罪を創設すべきでないかの説明に伺いますので、個別に連絡を頂ければ幸いです。

諦めることなく継続的に声を上げ続けましょう。

文責:正高佑志(Green Zone Japan 代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)

“大麻使用罪を巡る動向と論点整理
止めるためにできること” への2件のフィードバック

  1. 吉村竜太郎 より:

    すばらしいです!心より応援させて頂きます。
    大麻は🌍を救う
    LOVE&Peace 420®️

  2. まさ より:

    なぜ大麻使用罪を作ってはいけないのか?の1~3の他に4として、もっと単純に、
    「合法国から来日して日が浅い外国人から反応が出た場合(街中で喧嘩して逮捕され尿検査で)、日本国内で使用したか判別出来ず逮捕すべきか否か扱いが事実上不可能で、法適用の公平性が維持出来ない。日本の法律の使用罪で逮捕すれば外交問題になりかねない。」
    は考えられないでしょうか?
    麻取や警察で日々大麻事犯摘発で捜査にあたっている人間ならまずそこの面倒くささを危惧するのではと思います。

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