抗がん剤によるしびれを大麻が予防する

2021.09.08 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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抗がん剤によるしびれを大麻が予防する
2021.09.08 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

抗がん剤治療の副作用としてよく知られているのは吐き気、脱毛などですが、薬剤によっては末梢神経障害も高い頻度で出現します。

特にタキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル)、プラチナ系(カルボプラチン・シスプラチン)の抗がん剤の投与は、用量依存性に末梢神経障害を引き起こすことが知られており、患者さんの多くが慢性的なしびれや感覚異常、手の使いづらさに悩むことになります。一例としてオキサリプラチンを使用する患者では、90%が急性の神経障害を経験し31%が慢性ニューロパチーへと移行すると言われています。

問題はこの末梢神経障害に対して、現代医学は有効な治療法も、予防法も提供できていないことです。(リリカなどの治療薬が使用されますが効果は限定的です。

カリフォルニアのエイズ渦において活用される中で、大麻がHIV感染に伴う末梢神経障害を緩和することは経験的に知られるようになり、科学的にも示されています

この点に着目し、イスラエルのテルアビブ・ソウラスキー医療センター腫瘍内科の研究者であるWaissengrinらは、オキサリプラチン投与に伴う末梢神経障害に対する大麻の効果を後ろ向きに調査し2021年に報告しました。

この調査では2015年10月〜2018年1月の間に同施設でオキサリプラチン(エルプラット)+5FUという抗がん剤の投与を受けた患者を調査対象としました。いわゆるFOLFOXやFOLFIRINOXと呼ばれる抗がん剤の組み合わせであり、消化器がんの患者さんに対して使われるレジメンです。

そのうち医療大麻を併用していたのは248例、していなかったのは265例でした。(イスラエルには医療大麻プログラムが存在するため、がん患者さんの多くが様々な理由で医療大麻を標準治療に併用しています。)

大麻を併用した群はさらに抗がん剤に先行して大麻を使用した群(116名)と、抗がん剤の投与後に大麻を使用開始した群(132名)に分けられました。がん種としては、大腸がん、膵臓がん、上部消化器がん、転移性腫瘍の患者さんが存在しました。

抗がん剤投与により、中等症以上の神経障害が出現した患者の割合は、大麻を併用しない群では27.9%に及んだのに対し、大麻併用群では15.3%に留まりました。

さらに大麻使用と抗がん剤の投与の順番については、先に大麻を使用した群の方が神経障害の予防効果が高いことが示されました。(先に大麻を使用している状態で抗がん剤投与を受けた群では神経障害の出現率:7.8%であったのに対して、抗がん剤の使用後から医療大麻を使い始めた群では21.9%で出現しています。)

これは観察研究というモデルであり、エビデンスとしての信用性は高くないとされていますが、有効な予防手段が確立されていない現状、最も有望な選択肢であることは間違いありません。日本でも抗がん剤治療に医療大麻を併用できる日が訪れることを願っています。

執筆:正高佑志 Green Zone Japan代表理事。医師。著書に”お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社)”

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