どんな痛みにCBDを使うべきか?

2022.02.10 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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どんな痛みにCBDを使うべきか?
2022.02.10 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

CBDの用途のうち、不安や抑うつ、不眠と並んで頻度が高いのが慢性の痛みです。
これまでに行われたアメリカやイギリスの調査でも、慢性痛は使用目的の上位にランクインしていました。
しかし、頻繁に使われているということは、必ずしも薬理効果があることを意味しません。特に痛みはプラセボ効果の影響が大きい領域です。果たして本当にCBDに薬理的鎮痛効果があるかについては、近年、科学的評価が進んでいます。

医療大麻先進地域であるカリフォルニアでは、CBDは鎮痛手段の一つとして一般化しつつあると考えられるデータが示されています。2018年12月から2019年2月の間に、南カリフォルニアの7箇所のペインクリニックに受診する合計253人の患者を対象にしたアンケート調査では、患者の62%がCBDの使用経験がありました。それらの使用者の59%はCBDが痛みの緩和に役に立ったと回答しています。
ユーザーが抱えていた痛みは腰痛が67%と最も多く、首の痛み(45%)、下肢の痛み(23.3%)、神経痛(47%)、線維筋痛症(21%)、偏頭痛(33%)などが主要な病名・症状でした。
使用した製品のタイプは、喫煙・Vapingが63%と最も多く、エディブル(54%)、ティンクチャー(52%)、クリーム(49.7%)、軟膏(49.7%)、カプセル・錠剤(22.5%)、スプレー(17.2%)の順でした。
しかし実際には、日本の状況とは異なる点に解釈上の注意が必要です。カリフォルニアではTHCを含む製品も合法的に使用可能であるため、多くのユーザーがTHCを併用しています。この調査でも、THCを含む製品を使っていると回答した層(85名)は、CBDだけの製品を使っていると答えた層(51名)よりも多数派でした。そして、その他の鎮痛薬を減らすことができたと回答した割合は、THCを含む製品を使っている層の方が高かったようです。

鎮痛目的ではTHCが含有されていた方が医療効果が高いらしいというのは、これまでの知見から言えることです。しかし、単離されたCBDでも鎮痛効果が示された例も散見されます。
Pure Green Pharmaceuticalというアメリカの企業が、同社の開発したCBD舌下タブレット(20 mg/day)を用いて、糖尿病性ニューロパチーによる足の痛みに対して、28日間のプラセボ比較試験を行ったところ、CBDはプラセボと比較し有意な痛みスコアの改善を得たと報告されています。

一方で、治験を行った結果、有効性を示すことができなかったケースも認められます。
メルボルンのオースティン病院では、急性腰痛にて救急受診した患者100人に対してCBD 400 mg もしくはプラセボを単回投与し痛みの改善を比較するランダム化比較試験が行われましたが、残念ながらCBDとプラセボに有意差はありませんでした。

また手関節炎・乾癬に伴う関節炎の患者を対象としたデンマークのランダム化比較試験では20-30 mg/dayの少量CBD摂取はプラセボと比較し優位な鎮痛効果を示すことができませんでした。

○どのような痛みに対してCBDを使うべきか?
これらの結果を踏まえて、現状の日本の医療制度下でCBD使用が鎮痛目的に積極的に推奨される状況について考えてみたいと思います。第一に、骨折や抜歯後などの急性疼痛や、一般的な炎症性の疼痛に対しては、ロキソニンなどの一般的な鎮痛薬を優先させるべきではないかと考えます。カンナビノイド製品は保険対象外であり、費用対効果の面で太刀打ちできません。
がん性疼痛についても、医療用麻薬の導入を勧めることが多いです。麻薬という言葉に対して拒否感を示す患者さんは多いのですが、こちらも医療大麻と同様に適応を守って使えば非常に有効な治療手段となります。

一方で一般的な痛み止めが効きづらい慢性疼痛の病態や、偏頭痛、線維筋痛症などのECSの関与が疑われる病態にはより積極的に使用する意義があるでしょう。
また三叉神経痛や幻肢痛などの神経痛は通常の治療で対処が難しい種類の痛みであり、CBDを選択肢として試みる価値があると考えています。具体的にはリリカ、ガバペン、サインバルタなどが処方されているが充分な鎮痛効果が得られていない症例です。
またロキソニンなどの一般的な鎮痛薬にアレルギーがある場合、慢性的に鎮痛薬を使用し、腎機能や肝機能に負担がかかっている状況や、薬剤誘発性頭痛などの二次性の問題が生じている場合も切替や減量のためにCBDの導入を考慮する価値があると考えます。

CBD単体で効果が乏しい場合は、CBNやHHCなどのCB1・CB2受容体に作用するカンナビノイドを少量併用することで鎮痛効果が増強する可能性は考えられると思います。
痛みの経路は複雑で、選択肢は多いに越したことはないのですが、一方でCBDは魔法の薬ではありません。適応と使い方が肝心です。

執筆:正高佑志(Green Zone Japan代表理事・医師)

“どんな痛みにCBDを使うべきか?” への1件のコメント

  1. 鈴木雄久彦 より:

    肋間神経痛を発症しCBD&Noni製品を使用したところ、CBD製品を患部へ塗りオイルとNoni製品を経口
    したところ2〜3日ほどで痛みが緩和されました。

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