下肢静脈瘤による下腿潰瘍と大麻軟膏

2022.05.10 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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下肢静脈瘤による下腿潰瘍と大麻軟膏
2022.05.10 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

下肢静脈瘤は足の血管が瘤のように膨らむ病気です。患者さんは主に40代以上の女性に多く年齢と共に増加し、出産歴や立ち仕事がリスク要因として知られています。日本では1000万人以上が罹患し、特に一日に10時間以上立っている方は重症化しやすい傾向があります。下肢静脈瘤自体は命にかかわる病気ではありませんが、放置しておいて自然に改善することはなく、時間の経過とともに徐々に悪化していきます。重症化すると湿疹や脂肪皮膚硬化症などのうっ滞性皮膚炎を合併し、さらに悪化すると潰瘍になってしまいます。

下腿潰瘍の治療は弾性ストッキングなどを用いた圧迫療法が主体となりますが、治癒の難しい病態と言えるでしょう。近年の研究では、通常の圧迫治療での治癒率は3〜6ヶ月の治療期間で40~50%程度であり、ガイドラインに完全に準拠した治療を行なっても半年での治癒率は50~75%とされています。さらに一年以内の再発率は40~70%と高い確率で再発することが知られています。
圧迫以外の補助療法として、様々なクリームなどが使用されますが、一部の治療(カデックス軟膏)以外は統計学的に有意な治療効果を提供できていません。

この領域で、大麻軟膏の持つ可能性に注目しているのが、トロント大学緩和ケア科の医師であるヴィンセント・マイダ先生です。

彼が経営するVinSan Theraputicsが製造する大麻軟膏は、カルフィラキシスという難治性潰瘍疾患に対して、一定の効果が期待できるという学術報告が挙げられており、我々も以前、ブログ記事で取り上げました

今回は、2021年9月にExperimental Dermatology誌に掲載された下腿潰瘍へのオープンラベル試験の結果を紹介します。

対象はトロントのクリニックに通う14名の下腿潰瘍患者さんで、全員が6ヶ月以上の罹病期間があり、かつ標準治療の枠内で4週間以上治療を行ったにも関わらず、改善が得られていない方々でした。平均年齢は75.8歳で、全身状態の指標であるPPS(Palliative performance scale)スコアは平均で67.1点でした。参考までに健康成人のスコアは100点で、60~70点というのは趣味や家事は行うことはできるが通常の仕事や業務は困難な程度です。また8名が創傷治癒遅延の原因となる抹消動脈疾患を合併していました。

対象者は通常の圧迫治療に加えて、下記の大麻軟膏が二日に1回、創部へ塗布されました。治療は創部が完全に上皮に覆われるまで継続されました。
使用されたのは、前回と同じ組成の大麻軟膏で、カンナビノイドとしてはCBD:3.8 mg/ml、THC<1 mg/mgが含有され、その他にクェルセチン、ジオスミン、ヘスペリジンなどのフラボノイド、そしてテルペンの一種であるβカリオフィレン:152 mg/mlが含有されています。組成を見る限り、この軟膏の主成分はカンナビノイドでなくβカリオフィレンであると言えるでしょう。

これら14人のうち、11人が創の完全閉鎖を達成しました。創閉鎖に至るまでにかかった日数は平均して34日でした。残りの3名のうち、1名は海外に転居し、2名は下腿潰瘍と無関係な理由(交通事故と認知症関連の事故)でフォローアップ期間中に他界されたため、フォローアップが可能であった症例においては、全例で創閉鎖が得られたことになります。

これはランダム化や盲検化されていないオープン試験と言われるデザインであり、エビデンスレベルとしては低い研究に位置付けられますが、参加患者が高齢であったり抹消動脈疾患を罹患していることを考慮すると、結果は刮目に値するものと言えるでしょう。今後の更なる臨床応用に注目が集まります。

参考:http://www.think-vein.jp/about2.html

執筆:正高佑志(医師・一般社団法人Green Zone Japan代表理事)

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