カンナビノイド医薬品のメリット・デメリット

2022.09.18 | 国内動向 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan
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カンナビノイド医薬品のメリット・デメリット
2022.09.18 | 国内動向 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan

日本においても難治てんかんに対するCBDオイル(Epidiolex)の治験が始まり、それらを使えるようにするための法改正が行われようとしているのは事実ですが、これを“医療大麻解禁“と呼ぶべきかどうかについては、悩ましいところです。なぜなら厚生労働省が医療大麻と認識しているのは厳密には、カンナビノイド医薬品に分類されるものだけだからです。今回はカンナビノイド医薬品についてまとめます。

カンナビノイド医薬品とは?

カンナビノイド医薬品とは、文字通り処方箋医薬品として使用されるカンナビノイドを指します。処方箋医薬品というのは、病院でお医者さんが処方し、薬剤師さんが薬局で管理する医薬品です。この対義語にあたるのが代替医薬品であり、医療大麻の多くは独自の流通経路で管理されるため代替医薬品に区分されます。しかし中には処方箋医薬品として活用されているものが存在します。

THC製剤

最初期に開発されたのはTHC関連製剤でした。これらは1980年代にマリノール(Δ9-THC)、セサメット(THCアナログ)などの商品名で米国で販売され、エイズに伴う嘔気嘔吐・食欲不振・体重減少、並びに抗がん剤治療に伴う嘔気嘔吐への適応が認められています。日本では未承認であり、日本の法律上は麻薬に該当します。

THC : CBD = 50 : 50製剤(Sativex)

上記のTHC単離製剤が想定したほどの成果をあげることができなかったことへの反省から、大麻草全草を使った創薬に取り組んだのがイギリスの大麻医薬品専門の製薬企業であるGWでした。(現在はJAZZ製薬に吸収合併されています)
彼らが2005年に初めて上梓したのが、THC/CBD:1/1の比率で含有する口腔内スプレー剤サティベックスです。これは欧州30カ国で多発性硬化症に伴う痙縮の治療薬として承認を得ています。米国では大塚製薬ががんの疼痛治療薬としての適応を取得するための治験を行いましたが、良好な成績を示すことができず撤退した経緯があります。

CBD製剤(Epidiolex)

GWがサティベックスに続いて開発したのが、天然大麻草由来のCBDオイル、エピディオレックスです。これは成分の99%以上がCBDであり、成分としてはアイソレート製剤に該当すると考えられています。2018年に米国で承認を得た後に、欧州でも認可されています。現時点での適応はドラべ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症に伴う難治てんかんに限られています。日本でも治験計画書が提出され、厚生労働省の承認を受けたので、将来、患者への投与が開始される見込みです。

その他のカンナビノイド医薬品

過去に注目を集めたカンナビノイド医薬品としては、リモナバンが挙げられます。リモナバンはCB1受容体の拮抗薬であり、アコンプリアやスリモナといった商品名で2006年に痩せ薬として欧州各国で販売開始されました。しかしその2年後の2008年に自殺企図などの副作用が問題視され市場から撤退、日本でも予定されていた治験は中止となりました。
近年開発が進んでいるものとしては、CB2受容体の作動薬であるレナバサムという製品が開発され、膠原病の一種である皮膚筋炎の治療薬としての第二相試験が終了しています。今後第三相も行われる見込みです。これについては日本の医師向けサイトである m3.com にも掲載されています。

日本での活用の可能性・順序は?

まずはエピディオレックスの治験開始・承認が日本でのカンナビノイド医薬品の一歩目になることは間違いありません。その次に治験が行われるとしたら、同じくGWが所有するサティベックスを用いた多発性硬化症の領域か、もしくはレナバサムのような特許の切れていない新しい医薬品になるのではないかと思います。

メリットと問題点

処方箋医薬品として承認されることのメリットは患者の費用負担が挙げられます。また医薬品としての製造工程は厳格であり、製品の品質管理においても高い水準が維持されることはメリットです。
一方で、問題点としては治験の終了までに時間がかかること、経済ベースで採算の合うもの以外は臨床試験が行われないこと、また承認が得られても、適応範囲が限られることなどが挙げられます。実際に現時点ではカンナビノイド医薬品は麻薬と同じような指定管理の対象となる可能性が考えられています。そうすると安易なオフレーベル処方は抑制され、難治てんかんであってもCBDを処方してもらえない子供が出現してくる可能性が懸念されます。
そして何より、医療大麻の本質である、多様な患者に対する多様な選択肢という要素が抜け落ちてしまうことが懸念されます。大麻草の品種毎の含有成分のプロファイルが薬効の違いに直結し、個々の患者にとってベストな品種や用量が異なるという考え方と、成分を画一化させた処方箋製剤の流通には思想的な隔たりがあります。これらのギャップをどのように埋めていくのかは今後の世界的な課題と言えるでしょう。

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)

“カンナビノイド医薬品のメリット・デメリット” への2件のフィードバック

  1. OMA より:

    医療大麻解禁のニュースをみてブログを拝見さしていただきました。
    カンナビノイド医薬品の種類などを今まであまり理解していませんでしたが、詳細な成分や今後の治験の流れを知ることができ有り難かったです。
    今後の日本における大麻事情を見ていく上で参考にさせて頂きます。また、CBN、CBG、合法大麻などの記事や情報がありましたら拝見させいて頂きます。ありがとうございます。

  2. こうのすけ より:

    ヨーロッパを中心に医療大麻が使用されてるようですが、なぜ症例や緩和、完治などのデータが乏しいのですか?結局のところ効かない。でも新しい利権や産業を作りたいだけではないのですか?まるで医療だから必要です。と同意を集めて導入させて嗜好品でも大丈夫。という流れをつくるのが目的みたいで。ASAgirlみたいにポップにしちゃって医療大麻関係無いですよね?

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