厚労省の”大麻知識チェック”をファクトチェックします

2022.10.25 | 国内動向 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
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厚労省の”大麻知識チェック”をファクトチェックします
2022.10.25 | 国内動向 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan

2022年、厚生労働省のホームページ上に新たに出現した“大麻知識チェック“というページの内容について、科学的見地からみて複数の重大な誤りがあることを指摘します。

Q1:“大麻はあまり体に害がない?“
厚生労働省の正解は“No“となっており、大麻の使用によって学校や仕事といった社会生活が難しくなるとの記載が認められます。一方で、我々が行った国内最大規模の疫学調査の結果では、大麻使用者の95%が社会的に機能していることが示されています。厚労省が何を根拠に判断したのかは不明です。

Q2:“大麻吸ってもほかのクスリに手を出さなきゃ大丈夫でしょ?“
厚労省の正解は“No”となっており、大麻がゲートウェイドラッグであると論じられています。一方で米国薬物乱用研究所のウェブサイトには、”大麻使用者の大多数はハードドラッグには移行しない”と明記されており、今日ではゲートウェイ仮説は否定される傾向にあります。

Q4:“一回使っただけでも薬物の乱用になるの?“
厚労省の回答は“Yes”ですが、Oxford辞典によると薬物乱用(Abuse)とは“違法薬物の習慣的な使用“と定義されています。厚労省の定義ではあらゆる違法薬物の使用は乱用ということになりますが、現実には“自己治療使用“とでもいうべき用途が多く認められます。これは乱用で片付けられるべきではありません。

Q5:“お酒やタバコの方が体に悪いって言うよね?“
厚労省はこれを、“ウソ“と断定していますが、2010年にLancetに掲載されたNuttらの報告では、大麻の害悪はお酒の1/3以下とスコアリングされており、この論文は世界薬物政策委員会のリポートでも引用されています。

Q6:大麻を吸うとうつに効くんだよね?
厚労省の回答は“No“となっており、精神に悪影響があると記載されていますが、2019年にデイヴィット・カサレット医師らによって報告されたカナダの調査では、医療大麻使用者のうつは大麻使用の前後で平均して5.9点→2.7点へと改善していることが示されています。

Q7:海外では合法なんだから大麻はそれほど危険ではないのでは?
厚労省の回答は“No“となっており、厳しい刑罰を制定している国もあることを強調していますが、どこよりも強硬に薬物戦争を繰り広げてきた米国の大統領が、これまでの大麻政策が誤りであったことを認め、大麻での前科を帳消しにしたのは記憶に新しいところです。

Q9:大麻のことを相談する時、公的機関は秘密を守ってくれるの?
厚労省の回答は“Yes”となっていますが、医療現場に関して言えば、違法薬物使用の通報は現場の裁量に委ねられており、仮に通報しても守秘義務違反に問われないという判例が出ています。Googleで検索すると、“迷わず届け出ましょう“と書かれた弁護士事務所のウェブサイトがヒットします。国は“違法薬物の使用者を通報すべきではない“という明確な通達を出すべきです。

○そもそも参考文献を明示するべき
大麻の問題は医学公衆衛生の領域であり、エビデンスに沿った情報発信が行われるべきです。本サイトが子供向けの啓発サイトだとしても、参考文献のリンクを貼ること自体は何の問題もないはずです。それをやらないのは怠慢か、科学的根拠が明示できないフェイクニュースであると言わざるを得ません。これは行政に対する信用を著しく毀損する行為であることを作成担当者に自覚して頂きたいところです。

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)



“厚労省の”大麻知識チェック”をファクトチェックします” への1件のコメント

  1. ひでおasa桜井 より:

    おつかれさまです。
    ありがとうございます。

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