CBDを溶かすのはオリーブオイルが望ましいと考える理由

2023.01.07 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan
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CBDを溶かすのはオリーブオイルが望ましいと考える理由
2023.01.07 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan

CBDなどのカンナビノイドは一般的に脂溶性であるため水には溶けず、油にのみ溶けることが知られています。脂溶性の物質は水溶性の物質と比べて吸収・生体利用の効率が低下します。この課題に対する一つの解決策が他の油と一緒に摂取することです。例えば俗に、ほうれん草はバターで炒めたほうが栄養価が増すと言われるのも、ほうれん草に含まれる脂溶性栄養素(ビタミンA)が吸収されやすくなるためです。

このカンナビノイドの生体利用効率問題を研究テーマとして積極的に取り組んでいるのがイギリス・ノッティンガム大学薬学部のゲルシュコビッチ教授らの研究チームです。彼らのこれまでの研究によって、CBDに関しても粉末のまま摂取するよりも食用油に稀釈して摂取した方が利用効率が2.5~3倍に上昇することが報告されています。

しかし具体的に希釈用オイル(キャリアオイル)に何を使うのが望ましいかについては、現時点で結論は得られていません。GW製薬が製造販売する処方箋医薬品としてのCBDオイル=Epidiolexはキャリアオイルに太白ごま油を使用しています。製薬の開発において重要な問題であることを鑑みると、なんらかのメリットにより選択されたと考えるべきです。
(※太白ごま油:ごまを生のまま押しつぶして絞り精製した油。無色無臭。一般的なごま油はごまを焙煎してから圧搾される。)

この一つのスタンダードであるごま油に対して、オレイン酸やリノレン酸のような消化しやすい設計のキャリアオイルに変更することで、利用効率が上がると期待した実験がノッティンガム大学研究チームによって過去に行われましたが、ごま油の方が利用効率が高いという意外な結果が得られています。

今回再び、ノッティンガム大学薬学部の研究チームが、ラットを使い様々な植物オイルをキャリアオイルとした場合の生体利用効率の比較研究を行いました。
今回の研究では、①油なし、②太白ごま油、③ひまわり油、④ピーナッツ油、⑤大豆油(サラダ油やマーガリンの原料)、⑥オリーブ油、⑦ココナッツ油の7種類を比較検討しました。これらのオイルにCBDを溶かし(12mg/ml)12mg/kgの用量でラットに経口的に投与されました。摂取から1,2,3,4,5,6,8,10,12時間後のラット血液中のCBD濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した結果をプロットしたのが以下の図になります。

キャリアオイルの違いによって、血中濃度の波形が違うことが確認できます。これを数値化したのが以下の表です。

それぞれ上から、①油なし、②太白ごま油、③ひまわり油、④ピーナッツ油、⑤大豆油、⑥オリーブ油、⑦ココナッツ油のデータを示しています。
t 1/2というのは半減期であり、数字が大きいほど体内にCBDが長く留まることを示しています。t maxは血中濃度が最高値に達するまでの時間です。C maxは最高血中濃度であり、数字が大きい方がより高い血中濃度に到達したことを意味します。
最も重要なのがAUCという値であり、これがCBDの生態利用効率を数値化したものと言えるでしょう。(厳密に言うと血中濃度を積分した値になります)表では最も高いごま油(865)と最も低いココナッツ油(413)では二倍以上の差が生じています。このデータがそのまま人間にも適応できるとは限りませんが、ラットにおいてはごま油やオリーブオイルをキャリアとして使用するのがコストパフォーマンスの上では望ましいように思われます。

これらのオイルごとの違いがなぜ生じるかについて、研究者らは考察で太白ごま油やオリーブオイルにはオレイン酸やリノレン酸が豊富に含まれており、これらの脂質が腸管におけるリンパ液の移送を促進するためではないかと述べています。
太白ごま油とオリーブオイルの比較に関しては、ごま油の方がリノレン酸の割合が高いために酸化しやすく、CBDの吸収率にばらつきが生じやすいと指摘されています。これらの理由から、同研究の筆者らはCBDのキャリアオイルとしては現時点ではオリーブオイルが最も望ましいと考えているようです。
科学的知見は日夜刷新されるものであり科学的な常識はしばしば覆りますが、現時点では私個人としてもCBDの希釈にはオリーブオイルを使用することを推奨したいと思います。

執筆:正高佑志(医師・一般社団法人Green Zone Japan代表理事)

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