CBDは抗がん剤に伴う急性神経障害を予防する

2023.04.17 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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CBDは抗がん剤に伴う急性神経障害を予防する
2023.04.17 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

抗がん剤治療には数々の副作用が伴うことはよく知られていますが、たとえば吐き気に関しては抑制するための治療薬の開発が進んでいます。一方で有効な対処法が乏しいのがしびれなどの末梢神経障害(CIPN)です。
特にタキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル)、プラチナ系(カルボプラチン・シスプラチン)の抗がん剤の投与は、用量依存性に末梢神経障害を引き起こすことが知られており、患者さんの多くが慢性的なしびれや感覚異常、手の使いづらさに悩むことになります。一例としてオキサリプラチンを使用する患者では、90%が急性の神経障害を経験し31%が慢性ニューロパチーへと移行すると言われています。

これに対して大麻が予防的に有効である可能性を示す観察研究について、以前に紹介しました。
今回はCBDがCIPNの予防に役立つ可能性についての初めての学術報告を紹介します。

この論文は2022年8月に“Supportive Care in Cancer“という学術誌上に、デンマーク・ジーランド大学の研究者によって報告されています。この研究は二つの独立した調査をドッキングして解析されている点がユニークです。
こちらの研究チームはまず多周波振動計(MF-V)という新しい評価法を用いて、抗がん剤使用患者の神経障害の自然経過を評価する研究(CINCAN-1)を行い、この評価法が従来のスコアと同じ傾向を示す学術報告を行いました。さらに新たにCINCAN-1の患者を対象群として設定できるように評価の条件を揃えた上で、CBDを投与する新たな患者群を対象とした介入(CINCAN-2)を実施したのです。

今回対象となった抗がん剤のレジメンはカルボプラチン+パクリタキセル療法(TC)と カペシタビン+オキサリプラチン療法(CAPOX)でした。TCは非小細胞肺がんや卵巣がんの治療レジメンとして活用され、どちらの薬剤も点滴で短回投与されました。CAPOXは主に大腸がんの治療レジメンで、オキサリプラチンの単回点滴投与とカペシタビンの14日間の内服を実施しました。

CBDを服用する患者群(54名)は、抗がん剤投与開始の前日からCBD300mg/day(一日2回)を服用開始し、8日間毎日内服しました。使用されたCBDはGlostrup Pharmacy社によって製造されたGMP基準を満たすティンクチャー(10%)、THCの含有量は0.01%以下であり、0.2%のCBDVと0.1%のCBD-C4という成分を含有していました。

急性の神経障害については、この研究のために用意した10項目からなる自覚症状スコア(それぞれ10点満点で点数が高いほど症状が悪い)と、特別な測定機器(VibroSense Meter Ⅱ)を用いた客観的な評価を実施しました。

するとCAPOX患者では10項目のうち4項目(冷覚の低下・冷水を飲み込んだ際の違和感・咽頭不快感・精密運動のやりづらさ)でCBD投与群で有意に症状の低下を認めました。TC療法では1項目(最小の痛み)だけが有意な改善を認めました。計測機器を用いた評価でも同様の傾向が示されました。

本調査はCBDを投与した群としなかった観察群の条件が揃えられていないことや、短期の評価に留まっているというデザイン状の問題点を抱えていますが、それを補うだけの有用な知見を示しています。
将来的には“CAPOXを用いた標準治療にはCBDを併用するべき“という勧告がガイドラインに記載される日がやってくるかもしれません。

 

執筆:正高佑志(Green Zone Japan 代表理事 医師)

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