医療大麻と耳鳴り

2023.07.15 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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医療大麻と耳鳴り
2023.07.15 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

耳鳴りは、実際には音がしていないのにもかかわらず何かが聞こえるように感じる現象です。一般的な症状であり、全人口の10%〜15%が慢性的な耳鳴りに悩んでいると考えられています。命に関わることはないのですが、不眠や集中力の低下、不安やうつなど、様々な心理的、社会的影響を及ぼします。実際に全人口の約1%は、耳鳴りが日常生活に重大な影響を及ぼしていると報告されています。
病院に受診される方も多いのですが、原因が特定できなかったり、有効な治療法がない場合がほとんどです。病院では抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ビタミンBなどの血流改善薬が処方されることがありますが、効果は限定的です。

耳鳴りの原因は多岐に渡りますが、メカニズムとして聴覚にまつわる神経の過剰な興奮と異常活動が影響していると考えられています。そのため中枢神経を抑制する抗てんかん薬を耳鳴りの治療薬として活用しようという研究が行われていますが、現時点では十分なエビデンスは確立されていません。カンナビノイドは神経の過剰興奮を調整する作用、神経保護作用、抗炎症作用などを有し抗てんかん薬としても活用されます。そのため、耳鳴りの治療にも有効である可能性が期待されています。

2023年、カナダのトロント大学とオタワ大学の研究者らが、耳鳴りに対する大麻使用の効果について初の横断調査を実施しました。
この研究はカナダの3つのクリニックに耳鳴りを主訴に受診した患者さんのうち、ランダムに選んだ53名にアンケートへの回答を依頼しています。そのうち45名(85%)が回答に協力しました。
45名の患者さんのうち、42%(19名)はこれまでに大麻を使用した経験がなく、58%(26名)は経験がありました。また22%(10名)が現時点で大麻を使用していると答えました。
現在大麻を使用している10名のうち、80%(8名)が大麻は耳鳴りに関連した症状の緩和に役立っていると回答しました。
内訳としては、めまい・ふらつき・平衡感覚障害に対して効果を感じているのが38%(3/8名)、聴覚症状に効果があったのが38%(3/8名)が、不安、うつ、動揺、恐怖などの感情的な問題に効果があったのが75%(6/8名)痛み(頭痛、首痛)に対して改善を認めたのが88%(7/8名)、睡眠障害(88%、7/8名)、機能障害(集中、疲労、仕事の障害)に効果を実感したのが50%(4/8名)でした。

摂取形態としては、食品と喫煙がそれぞれ6名で最多でした。
また”耳鳴りの治療に対して、大麻を使うことに興味があるか?”という質問に対しては回答者の96%が関心があると回答しました。

耳鳴りが命にかかわる病態ではないため、新薬の研究も活発には行われづらいという側面があります。そのため今後、合法地域では大麻が耳鳴り治療の第一選択になる可能性があります。

執筆:正高佑志(医師・一般社団法人Green Zone Japan代表理事)

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