運転とCBD:影響についての考察

2023.06.19 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
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運転とCBD:影響についての考察
2023.06.19 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan

精神に作用する物質の摂取は、その影響により運転への危険性が必ず議論の的となります。大麻に関しては、過去の研究により運転への若干のリスクが明らかになっています。そのため、酩酊状態での運転は、大麻が合法化されている地域でも、行ってはならないという共通認識があります。
では、CBDについてはどうでしょうか?CBDは睡眠薬の代替として使用されることがあります。それは、CBDが眠気を引き起こす可能性があることを示しており、理論的には運転能力を低下させるリスクが存在すると解釈できます。
2022年、ウエストバージニア大学の研究チームは学生を対象に、CBDが運転能力を損なうか否かについてのランダム化比較試験を実施しました。
実験の参加条件は、健康な大学生で運転免許を持ち、現在内服薬を使用しておらず、過去1ヶ月以内に運転経験があることでした。参加者40名は2つのグループに分けられ、それぞれCBD 300mgまたはプラセボを投与されました。その後、40分間のドライブシミュレーションが行われ、車線逸脱、衝突、ブレーキ反応時間などの運転パフォーマンスが評価されました。結果として、CBD摂取群はプラセボ群と比較し、運転パフォーマンスには有意な低下は見られませんでした。
しかしながら、この結果が運転への影響が全くないことを示す訳ではありません。研究の参加者が少なかったため、統計的な”パワー不足”が指摘されています。参加者数を10倍に増やすと、統計的に有意な運転能力の低下が確認された可能性も考慮する必要があります。

それでも、この研究から、CBDが運転能力に与える影響は軽微である可能性が高いこと、さらに300mgという大量投与にもかかわらずこの結果であったことから、サプリメントとしての少量CBD摂取は運転能力に大きな影響を与えないと推測できます。しかし、一部のユーザーが運転に影響を受ける可能性がある以上、販売者は警告を発する必要があります。

特に注目すべきは、交通事故が起こった際の自動車保険の支払い問題です。多くの自動車保険は、アルコール、睡眠薬、大麻等の違法薬物を使用して事故を起こした場合、免責対象として保険金が支払われません。もしCBDを服用しているユーザーが事故を起こした場合、睡眠薬と同様の扱いとなる可能性があります。その際、CBDの販売業者が適切なアドバイスをしていなければ、善管注意義務違反で法的責任を問われる可能性があります。このため、基本的には、CBDの影響下では自動車の運転を避けるべきというのが、標準的な答えとなるでしょう。

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)

 

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