2022年6月9日、タイで大麻の合法化が実施されたことは日本でも広く報道されました。
これを受けて筆者は9月12〜20日にかけて、実際に現地視察に訪れました。
ルールは整備途上
CNNなどでも“合法化“と報道がなされましたが、厳密には“非犯罪化“のようです。つまり違法薬物のリストから大麻が除外された訳ですが、合法的に管理するルールは9月時点では機能していないようでした。先のCNN報道ではTHC:0.2%を超える大麻は規制の対象とありましたが、実際にはTHC濃度20%前後の大麻が市中で流通しています。市中の生活実感としては、タバコを吸って良いところでは大麻の喫煙もOKというのが実際のルールという印象でした。
ディスペンサリーを巡ってみる
首都バンコクと北部の主要都市であるチェンマイで、実際に大麻を販売しているお店(ディスペンサリー)を巡ってきました。(店内の様子に関してはYoutube動画で紹介しておりますのでご確認ください。)

合法化後に雨後の筍のように出現したこれらのディスペンサリーは、いずれも営業開始から数ヶ月〜数日とのことでした。本来、海外からの大麻輸入は違法とされているそうなのですが、販売されている大麻の大半はカリフォルニアからの輸入と表記されており、価格はバンコクで800バーツ(3200円)/g、チェンマイで600バーツ(2400円)/gが一般的でした。日本国内の違法大麻の金額が5000円/g程度とされていることを考えると、割高な印象を受けます。
現時点では、タイ産と書かれている大麻も、実際は海外から持ってきたものをロンダリングし、産地偽装して販売しているのでは?と現地事情に詳しい識者は述べていました。今後、タイ国内での栽培体制が整備され、国産製品の品質がカリフォルニアに匹敵するようになれば、市場価格の低下につながるのかもしれません。
(夜になると移動販売の車が繁華街に散見されました)
治療施設を見学
バンコクでは日本人向けの医療大麻治療を提供しているセレン病院に見学に伺いました。立地としてはバンコク市街地と空港の中間地点あたりに位置する、50床程度の回復期病院でした。京都大学に留学経験があり、日本語を話されるレヌー先生という女性医師が、実際に行っている大麻治療について解説して下さいました。
先生の専門が老年医学であることもあり、パーキンソン病や認知症、加齢に伴う全身の関節痛などが良い適応と考えておられるようでした。製剤としては政府系の国内製薬企業であるGPOが製造販売するティンクチャーと、独自のルートでタイ東北地方から供給を受けているフルスペクトラムオイルを使用しているとのことでした。
私が訪問した際にも、日本から膵臓がんの患者さんが渡航、滞在されておりお話を伺うことができました。がん治療に関しては、どのようなプロトコールを採用すべきかについてのコンセンサスは形成されておらず、それぞれの治療家が手探りでベストな方法を模索しているのが現状であり、ある種のスタンダードを確立することが業界全体の今後の課題かと思われます。
チェンマイではCanna Lifeという外来型の大麻リトリート施設を見学させて頂きました。
これはPacific Cannovation Groupという企業グループにより運営されており、チェンマイ、プーケット、サムイ島に支店を置いています。基幹施設であるチェンマイにはラオスの医師免許を持ち、伝統医療の文脈で医療大麻の使用経験が豊富な女医さんが滞在され、コンサルティングによって症状に応じたカンナビノイド製品の使用アドバイスを頂けるようです。他にも大麻オイルマッサージや、ヨガ、ピラティス、ビタミン点滴など統合医療的なアプローチがオプションとして用意されていました。宿泊施設ではないので、滞在中のホテルからリムジンによる送迎サービスを提供しているそうで、日本からも来客があっているとのことでした。
感想
突如として無秩序とでもいうべき状況に突入したタイの大麻事情ですが、社会に影響をきたしているかというと、私が見る限りでは特に混乱は生じていないように見受けられました。データがあるわけではないのですが、規制緩和されたからといって、それほど多くの人々が大麻を吸っている印象は受けませんでした。仮に日本で、明日から大麻が非犯罪化されても、やはり国民の大半は手を出さないでしょう。今回の法改正は、産業的な可能性や政党の支持獲得などの目論見が背景にあるようです。
タイの合法化に伴い、国境を接するカンボジア、ラオス、ミャンマーにも影響は遡及していくでしょう。ゆくゆくはASEAN全体が大麻合法化に舵を切ることになるのは間違いありません。日本だけが鎖国を続けていくことは現実的ではないと、改めて実感した次第です。
執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
コメントを残す