なぜ”ハイ”で愛し合うのか?大麻がセックスにもたらす効能

2026.06.27 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan
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なぜ”ハイ”で愛し合うのか?大麻がセックスにもたらす効能
2026.06.27 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan

このブログ記事では、2026年に『The Journal of Sex Research』に掲載された最新の研究論文「『最高に美しい感覚』:若年成人における大麻の影響下での性行為に関する身体的、心理的、およびジェンダー化された動機の探求」の内容を詳しく解説します。

カナダのケベック州で行われたこの調査は、若者がなぜ大麻を使用してセックスを行うのか、その「快楽」と「ジェンダー(社会的性別)」に焦点を当てた画期的な研究です。


はじめに:なぜ「大麻とセックス」の研究が必要なのか?

世界的に見て、大麻はアルコールに次いで、性的文脈で最も頻繁に使用される物質です。特に若年成人の間ではその傾向が顕著で、ケベック州の調査では男性の45%、女性の35%が「ハイ」な状態で性行為を経験したことがあると回答しています。

しかし、これまでの研究の多くは「リスク(避妊なしの性交や依存症など)」にばかり焦点を当ててきました。その結果、若者がどのようなニーズを満たすために、意図的に大麻を選択しているのかという、ポジティブな側面や複雑な動機が見落とされてきたのです。

この論文は、27名の若者への詳細なインタビューを通じて、彼らの「生の声」からその動機を解明しようとしています。


研究の方法:27人の「生の声」を聞く

研究チームは、ケベック州に住む18歳から24歳の若者27名を対象に、半構造化インタビューを実施しました。参加者の属性は非常に多様で、シスジェンダーの男女だけでなく、トランスジェンダー男性、ノンバイナリー、アジェンダー、クィアなど、多様なジェンダーアイデンティティを持つ人々が含まれています。

分析には「ジェンダー構造フレームワーク(Gender Structure Framework)」という理論が用いられました。これは、ジェンダーを単なる個人の特徴ではなく、以下の3つのレベルで機能する社会的構造として捉える考え方です。

  1. 個人次元: ジェンダー規範やアイデンティティの内面化。
  2. 相互作用次元: 対人関係におけるジェンダーの演じ方や交渉。
  3. マクロ次元: 文化、制度、社会的期待による規範の強化。

この視点を用いることで、大麻使用の動機が単なる個人の好みではなく、社会的なジェンダー規範といかに深く結びついているかが浮き彫りになりました。


性行為における大麻使用の3つの主要な動機

インタビューの結果、若者が大麻を使用してセックスを行う動機は、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されました。

1. 性的体験の強化と変容(Enhancing and Transforming)

最も多く語られたのは、大麻が感覚や感情、関係性を深めるという側面です。

2. 性の円滑化と快楽への障害の除去(Facilitating Sex)

大麻は、セックスをよりスムーズにするための戦略的なツールとしても利用されていました。

3. 文脈的・付随的な影響による動機(Contextual Influences)

特定の目的があるわけではなく、習慣や環境によって結果的に大麻の影響下でセックスに至るケースです。


ジェンダーが動機をどう形作っているのか?

この研究の最も興味深い点は、大麻使用の動機が「男性らしさ」や「女性らしさ」といったジェンダー規範の影響を強く受けていることを明らかにした点です。

男性:パフォーマンスとイニシアチブ

シスジェンダーの男性にとって、大麻は「パフォーマンス(性的な能力)」を向上させ、自信を持ってイニシアチブを取るための道具でした。これは、「男性は常に性的欲求が強く、リードし、高いパフォーマンスを維持しなければならない」という有害な男性性の規範を内面化し、それに適応しようとする姿を反映しています。

女性:リラックスとメンタルロードからの解放

シスジェンダーの女性にとって、大麻は「リラックスし、考えすぎるのをやめる」ための手段でした。女性は日常生活でケア労働や感情的な責任(メンタルロード)を負わされることが多く、それが性的満足を妨げる要因となります。また、美の基準や「パートナーを喜ばせなければならない」という規範から一時的に逃れ、自分の快楽を追求するための「許可証」として大麻が機能していました。

ジェンダー多様な人々:対処と肯定

トランスジェンダーやノンバイナリーの人々にとって、大麻は「ジェンダー不協和(自分の体への違和感)」や社会的スティグマによる苦痛を和らげるための重要なリソースでした。同時に、大麻使用がクィア・コミュニティの文化の一部として、自分のアイデンティティを肯定し、繋がりを深めるツールになっている側面も確認されました。


結論と今後の展望:リスクから「快楽と主体性」へ

論文の結論として、著者たちは、大麻とセックスの関係を語る際に「快楽」と「主体性(エージェンシー)」を無視してはならないと強調しています。

大麻を使用することは、単なる「コントロールの喪失」や「リスクの高い行動」ではなく、多くの若者にとって、より良い性的体験を実現し、社会的なプレッシャーや身体的不安を克服するための「意図的な戦略」なのです。

私たちが考えるべきこと

この研究結果は、教育や医療の現場に対して以下のことを示唆しています。

  1. スティグマ(偏見)のない教育: 単に「大麻は危険だ」と否定するのではなく、若者がなぜそれを使うのかという現実に即した、非難を伴わない性教育が必要です。
  2. ジェンダーに配慮した支援: 男性にはパフォーマンスへのプレッシャー、女性にはメンタルロード、トランスジェンダーの人々には不協和やトラウマへの配慮など、ジェンダーに特化したアプローチが求められます。
  3. 快楽の権利を認める: 性的な幸福(ウェルビーイング)において快楽は不可欠な要素です。大麻がその快楽を追求するための手段となっている現状を認め、健康を守りながら、より安全で満足のいく選択ができるようサポートする姿勢が重要です。

「最高に美しい感覚」を求める若者たちの動機の背後には、彼らが直面している社会的な壁や、より良い繋がりを求める切実な願いが隠されていました。大麻とセックスの関係を深く理解することは、単なる薬物問題の枠を超え、現代の若者の「親密さ」と「自己肯定」のあり方を問い直すことにも繋がるのです。


出典: “It’s a Beautiful Feeling”: Exploring Embodied, Psychological, and Gendered Motivations for Sex Under the Influence of Cannabis Among Young Adults. The Journal of Sex Research, 2026.

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