CBD単回摂取で食欲増進?最新研究が示す意外な結果

2026.10.16 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
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CBD単回摂取で食欲増進?最新研究が示す意外な結果
2026.10.16 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
インフォグラフィックス

CBD(カンナビジオール)は「精神作用がなく、食欲にも影響しない」というイメージを持たれがちな成分です。実際、大麻に含まれるTHCが強い食欲増進作用(いわゆる「マンチーズ」)を引き起こすことはよく知られていますが、CBDについてはこれまで人を対象にした食欲・摂食行動への影響を調べた研究がほとんど存在していませんでした。ところが2026年に学術誌Appetiteに掲載された新しい研究で、健康な成人がCBDを単回摂取したところ、その後の食事量が有意に増加したという結果が報告されました。本記事では、この研究の内容と意義について詳しく解説します。

研究の背景

エンドカンナビノイドシステムは、体内のエネルギー摂取を調整する重要な役割を担っていることが知られています。CB1受容体を介したシグナル伝達は食欲や代謝と密接に関わっており、THCがCB1受容体に作用することで食欲増進効果を発揮することは古くから知られています。

一方でCBDは、THCとは異なる薬理学的プロファイルを持ち、CB1受容体への直接的な結合力は弱いとされています。しかし、CBDがエンドカンナビノイドシステムに間接的に作用する可能性は複数の基礎研究で示唆されており、人における摂食行動への影響は未検証のまま残されていました。CBD製品は睡眠や不安、疼痛管理などを目的に広く使用されていますが、食欲や代謝への影響についての科学的根拠が乏しいことは、CBD利用者にとって重要な情報の欠落と言えます。この研究チームは、この空白を埋めるために厳密な実験デザインでの検証を行いました。

研究方法

本研究は、健康な成人15名(うち女性4名)を対象とした二重盲検ランダム化クロスオーバー試験として実施されました。参加者は298mgのCBDまたはプラセボのいずれかを摂取し、後日入れ替わってもう一方を摂取するという形で、両条件を全員が経験する設計となっています。

CBDまたはプラセボの摂取から30分後、参加者は炭水化物・タンパク質・脂質を含む混合栄養素の朝食を摂取しました。その後、血液サンプルによるエネルギー基質やホルモンの測定、そして間接熱量測定法によるエネルギー代謝の評価が行われました。主観的な食欲の感覚については1時間ごとに記録され、CBD摂取から180分後には、参加者が満足するまで自由に食べられる形式のランチ(ad libitum lunch)が提供され、そこでの摂取エネルギー量が測定されました。

結果

最も注目すべき結果は、自由摂取ランチにおけるエネルギー摂取量の違いです。CBD摂取後のエネルギー摂取量はプラセボ摂取時と比較して193kcal多く(95%信頼区間:80kcalから306kcal)、統計的に有意な差が確認されました(p=0.003)。具体的な数値としては、CBD摂取時のエネルギー摂取量は979±462kcal、プラセボ摂取時は786±280kcalでした。

一方で、論文タイトルにも明記されている通り、CBD摂取は食後の血糖値や脂質代謝には影響を及ぼさなかったことが示されています。つまり、朝食後の血液中のエネルギー基質やホルモンの変動パターン、そして間接熱量測定によるエネルギー代謝の指標については、CBD摂取群とプラセボ群の間に有意な差は見られなかったということです。この結果は、CBDが摂食行動(食べる量)には影響を与える一方で、栄養素の代謝処理そのものには急性的な影響を与えないという、興味深い分離を示しています。

考察・意義

この研究結果は、CBDに関する一般的なイメージを見直す必要性を示唆しています。CBDは精神作用を持たず、食欲にも影響しない「安全な」成分として広く認識されがちですが、今回の結果は単回摂取という限られた条件下でも、食事量に有意な増加をもたらす可能性があることを示しました。

このメカニズムについては、本研究のアブストラクトだけからは明確に断定できませんが、CBDがエンドカンナビノイドシステムに何らかの間接的な影響を与え、食欲や食行動に関わる神経回路を修飾している可能性が考えられます。THCのような直接的なCB1受容体活性化とは異なる経路を介している可能性もあり、今後のメカニズム研究が必要です。

実用的な観点から見ると、この結果はCBD製品を日常的に使用している人々、特に体重管理やダイエットを目的として健康食品的にCBDを利用している人にとって重要な情報となります。CBDが「食欲を抑える」という期待を持って摂取している場合、実際には逆の効果、つまり食事量の増加につながる可能性があるということです。

ただし、この研究にはいくつかの重要な限界があります。まず参加者数が15名と非常に少なく、統計的な検出力には限界があります。また女性参加者が4名のみと少なく、性差の影響を十分に検証できていません。さらに、この研究は単回摂取の急性効果を検証したものであり、CBDを継続的に摂取した場合の長期的な食欲や体重への影響については全く分かりません。加えて、対象者はすべて健康な成人であり、肥満や糖尿病、その他の代謝疾患を持つ人々への影響は不明です。

まとめ

本研究は、CBDの単回摂取が健康な成人においてその後の食事量を有意に増加させる可能性を示した点で重要な知見を提供しています。一方で、血糖値や脂質代謝といった生理学的指標には影響を与えなかったことから、CBDの作用は代謝そのものよりも「食べる量」を決定する食欲・摂食行動のメカニズムに特異的に関わっている可能性があります。

CBDを健康や美容目的で利用する人が増えている中、このような基礎的な生理学的データの蓄積は非常に重要です。ただし本研究は小規模かつ単回摂取に限定された予備的研究であり、この結果だけでCBDと体重増加の因果関係を断定することはできません。今後、より大規模な参加者数での検証や、継続摂取時の影響を調べる長期研究が必要とされます。CBD製品を利用する際は、こうした科学的知見の蓄積を踏まえながら、個々の目的や体調に応じて慎重に判断することが望まれます。

参考文献

Johnson DA, Funnell MP, Cable TG, Peden D, McLeod CJ, Wheeler PC, Bailey SJ, Clifford T, Heaney LM, James LJ. “A single dose of cannabidiol increases ad libitum energy intake in healthy adults but does not affect postprandial glucose or lipid metabolism.” Appetite. 2026. DOI: 10.1016/j.appet.2026.108531
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41825697/

正高佑志

執筆者: 正高佑志 Yuji Masataka(医師)
経歴: 2012年医師免許取得。2017-2019年熊本大学脳神経内科学教室所属。2025年聖マリアンナ医科大学・臨床登録医。
研究分野:臨床カンナビノイド医学
活動: 2017年に一般社団法人Green Zone Japanを設立し代表理事に就任。独自の研究と啓発活動を継続している。令和6年度厚生労働特別研究班(カンナビノイド医薬品と製品の薬事監視)分担研究者。
書籍: お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社)、CBDの教科書(ビオマガジン)
所属学会: 日本内科学会、日本臨床カンナビノイド学会(副理事長)、日本てんかん学会(評議員)、日本アルコールアディクション医学会(評議員)
更新日:2026年9月1日

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