CBD製品の流通拡大、その光と影 ー2021年を振り返ってー

2021.12.17 | 国内動向 経済 | by greenzonejapan
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CBD製品の流通拡大、その光と影 ー2021年を振り返ってー
2021.12.17 | 国内動向 経済 | by greenzonejapan

2019年にアメリカから製品の流入により本格的に動き始めた日本のCBD市場は、2021年にはより一層の盛り上がりを見せました。
個人的な感触として、暮らしの中で意図せずCBD製品を見かけるようになったのは今年からです。
たとえば、10月に行われた国内最大規模の格闘技イベント(RIZIN Landmark)の冠スポンサーはCBD企業でした。
渋谷の路面にCBD製品を販売する店舗ができたのも今年のことですし、いつの間にか、私が住む熊本でも大手のドラッグストアの棚にはCBDを配合したシャンプーやコンディショナーが並んでいます。11月には“ゲータレード“でお馴染みの清涼飲料水企業、チェリオがCBD飲料を販売開始することを発表しました。1本あたりCBDを20 mg配合し500円だそうです。2021年は日本でCBDが一般認知された年と言えるのではないでしょうか?

このように多くの企業が参入することには、社会運動の観点からいくつかのメリットが認められます。

①認知の拡大
最大のメリットは認知の拡大でしょう。格闘技イベントや渋谷の実店舗が良い例ですが、不特定多数の目にCBD製品が触れることによって、大麻と社会に合法的な接点が増えます。今後の動向次第では、CBD製品のテレビCMが流れる日もそう遠くないかもしれません。

②信用性の向上
大手企業が参入することは、CBD市場全体の信用性の向上に繋がります。私が出演したAbemaの番組でも、“CBDは高島屋でも売られています“という一言は有効に機能したように思います。誰もが知っている企業がCBDを扱うことで、大麻に貼られたネガティブなイメージは中和されるでしょう。

③競合による価格低下
供給する企業が増えることにより、市場での競合が発生しCBD製品の価格は低下する傾向があります。実際に数年前の時点では、1 mgあたり15円が相場であった日本のCBD市場ですが、現在は3〜5円/mgでも成分表示などの基準を満たした製品が購入可能となっています。より多くの必要とする方にCBDが利用可能になるという点からは望ましい変化です。

一方で以下のような流通拡大のデメリットとでも言うべき現象も散見されています。

①大麻とCBDの切り離しが進む
多くの企業にとって、CBDが大麻から採れているというのは可能なら伏せておきたい不都合な真実です。そのため大麻というワードはもちろん、最近ではヘンプという言葉すら、CBDの説明に用いられないケースも見受けられます。
またしばしば用いられるのは、THCとCBDを対比し、THC=違法な成分=悪だが、CBD=合法成分=善というという論法です。手っ取り早くCBDを販売促進するために、このような物語が流布することは、大麻に対する理解につながらないだけでなく、逆に偏見を助長する恐れがあるのでは無いかと危惧しています。

②薬効の乏しい製品の流通
万能薬としての評判が高まるにつれて、CBDを配合を謳う様々な製品が登場しています。新規性や話題性だけを追求した結果、CBDウェアやCBDシャンプーのように理論上、薬理効果が期待できない製品が大々的にプロモーションされている状況は決して望ましいものではありません。
またマーケティング重視で、販売価格などから逆算的に設計された安価な製品に、薬理効果が期待できるだけのCBDが含有されているのか、疑問に思うこともしばしばです。怪しいCBD製品が売れるのはこれまでに誠実な啓発活動やビジネスを展開してきた先人達が作り上げたCBDへの信頼感とイメージに便乗した結果であり、他者が積み上げた信用を勝手に換金する行為です。

③ブームとして消費される懸念
適切な使用の範囲を超えて、猫も杓子もCBD配合という盛り上がりは一過性のブームであり長続きしません。街からタピオカ屋が消えていくように、移り気な事業者はすぐに次のビジネスへと矛先を変えていくでしょう。粗悪なCBD製品を使用したユーザーには、ネガティブな印象だけが残されることになります。これは好ましい現象ではありません。

我々がどう思うかと関係なく、CBD産業が大きくなるにつれて、その影も濃くなっていくでしょう。市場を健全化するために、皆さんのようなユーザーができること。それは買い物という消費行動を投票と考え、なるべく適切な製品と企業を応援することです。
・成分表示を提示し、理論上妥当な製品を購入すること
・大麻とCBDを切り離すことのないプロモーションを行う企業を応援すること
・正しい知識の啓発活動に協力的な企業を応援すること

一人一人が上記を心がけて頂くことが、健全で長期的なCBD市場を育成することにつながり、ひいては日本の大麻合法化への架け橋になるのではないでしょうか。


執筆:正高佑志(医師・一般社団法人Green Zone Japan代表理事)

追記:「今後の動向次第では、CBD製品のテレビCMが流れる日もそう遠くないかもしれません」と書きましたが、メイヂ食品株式会社のメイヂ健康大麻油はすでに TVCM をテレビ北海道、京都放送、群馬テレビ、千葉テレビ、栃木放送、岐阜放送、テレビ神奈川、愛知スターキャットなどで流しているとのご指摘をいただきましたので追記させていただきます。

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