日本における大麻使用者の健康についての実態調査結果を公表します

2021.12.21 | GZJ 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
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日本における大麻使用者の健康についての実態調査結果を公表します
2021.12.21 | GZJ 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan

この度、一般社団法人Green Zone Japan(筆頭研究者:正高佑志)と国立精神・神経医療研究センターの共同による、日本の大麻使用者を対象とした健康への影響の実態を把握するための横断調査結果が学術論文として公表されたので、概略をご報告させていただきます。

調査は国内在住で違法な大麻の使用経験を1回以上有する者(CBD製品を除く)を対象とし実施され、Facebook、Twitter、YoutubeなどのSNSプラットフォームを用いたオンライン・アンケート記入の呼びかけに4138件の有効回答が寄せられました。
回答者は男性が82%、女性が18%で、平均年齢は32歳でした。95%が就業(学業、家事専業を含む)しており、精神疾患の既往を有する者が14%含まれました。

大麻によってもたらされる健康被害についての質問項目を設け、回答者の自己判断をベースに大麻関連の診断に該当するかどうかを判断しました。
その結果、大麻使用障害(依存症)に該当する可能性のあるユーザーは生涯使用者の8.3%でした。
大麻誘発性障害(急性の精神症状や嘔吐などの望まない症状)は38.5%に認められましたが、その中で症状が24時間以上持続し、何らかの救護を必要とするものは0.12%に留まりました。
また一般に大麻精神病と呼称されている、大麻使用を契機とした慢性の精神症状(幻覚など)を経験したと回答したのは1.3%でした。さらに大麻使用をきっかけとした無気力を経験した割合は2.7%でした。

これらの結果について、第一に特筆すべきは回答者の95%近くが社会的な機能を果たしていると回答したことです。一般的に大麻を含む違法薬物使用者には、怠惰で社会的責務を果たしていないという先入観が根強く存在します。本調査結果はこのイメージが実態に即したものではない可能性を示すものです。
 また違法薬物の使用者はその多くが”依存症”であるという社会通念が流布していますが、今回の調査の結果、大麻使用者の90%以上は依存には該当しないことが示されました。類似した値はアメリカにおける先行研究でも示されており、信憑性がある結果と考えています。
 大麻使用に伴う一過性の有害事象は使用者のおよそ40%で経験されていましたが、そのほとんどは医療的介入を要することなく自然軽快するもので、問題となるものは0.12%に過ぎないことが示されました。これはアルコールによってもたらされる嘔吐や意識障害と類似の健康被害に該当します。アルコールによるこれらの健康被害は”飲み過ぎ”や”酒癖の悪さ”として扱われ、病気と診断されることはありませんが、これが違法薬物による影響の場合は”大麻精神病”や”Cannabis hyperemesis syndrome”という疾患扱いになるのは、病とはなにかを考える上で重要な示唆を与えてくれます。
 厚生労働省がウェブサイト上に記載している”無動機症候群”については、該当する可能性のある者は2.7%でした。しかし同様の無気力は大麻を使用しない層においても発生し得ます。実際に大麻を使用しない大学生の母集団を対象に調査を行ったところ、同様の無気力に該当する割合は5.9%であったことが学術的に報告されています。無動機症候群は英語でamotivational syndromeと表記されますが、この疾患概念を検索してもヒットする件数は極めて少数です。国際社会において一般的に認知されている疾患概念とは言えないでしょう。

これらの結果は、いずれも本調査によって日本で初めて示されたものであり、今後の薬物政策のあり方を検証する上で基盤となるデータです。本調査に関連する報告はこれが第一報であり、現在、第二報を作成中です。

最後になりましたが、本結果は調査に協力頂きました皆様の尽力の賜物です。改めて御礼申し上げます。

※原著論文:SNSを活用した市中大麻使用者における大麻関連健康被害に関する実態調査ー第1報ー
著者:正高佑志(研究責任者)、杉山岳史、赤星栄志、松本俊彦
掲載誌:日本アルコール・薬物医学会雑誌 56巻4号(通巻第288号)2021年12月24日発行
発行元:一般社団法人 日本アルコール・アディクション医学会
ISSN:1341-8963

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)

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