CBDは禁煙の役に立つのか?

2022.05.18 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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CBDは禁煙の役に立つのか?
2022.05.18 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

CBDのVape製品のよく挙げられる用途の一つに禁煙があります。実際にSNS上でも、CBDで禁煙している・禁煙できたという声は散見されます。CBD企業がリキッド使用者110名を対象に国内で行ったアンケート調査でも、タバコの本数が減ったと80%が回答しているようです。
Vapeという製品がタバコと同じく吸入という摂取形態であることが、タバコの代用品足り得る最大の理由だと考えられますが、禁煙パイポやプラセボ以上の薬理効果がある可能性を示唆する研究が行われていることをご存知でしょうか?

一報目は2013年にAddictive Behaviors誌に掲載された、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン薬学教室のセリア・JA・モルガンらによる報告です。

セリアらは18~35歳の24名のタバコ喫煙者(一日に10本以上)をリクルートし、半分をCBDインヘーラーに、残り半分をプラセボのインへーラーに割り付けました。使用されたCBDはSTI Pharmaceutical社のものであり、ワンプッシュで400μgのCBDが摂取できる仕様となっていました。(写真はCBDインヘーラーの例です。治験で使用された製品ではありません。)

治験参加者は一週間の介入期間中、タバコを吸いたくなったらその都度インヘーラーを使用するよう指導され、インヘイラーの使用後もタバコへの欲求がある場合のみ喫煙するよう指導されました。

このCBDインヘーラーを使った介入の結果、一週間に100本近くあった喫煙本数がおよそ40%減少しました。これは統計学的に有意な結果でした。一方のプラセボ群では明らかな喫煙本数の減少は認められませんでした。


二報目も同じく、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン薬学教室から2018年に報告されています。

タバコ喫煙者はニコチンが切れると、タバコのことばかりを考え、つい注意がタバコに向いてしまうようになります。俗に言う“吸いたくてしょうがない“状況ですが、これは専門用語で“依存による注意バイアス“と呼ばれます。

今回、主任研究者であるHindochaらは、起床時のニコチン切れの喫煙者にCBDを経口で800 mg投与し、プラセボ群とすることで、注意バイアスにどのような相違があるかを調査しました。するとCBDを服用した群では、タバコに対する注意バイアスが有意に低下することが観察されたのです。これはCBDの単回使用が、タバコへの欲求を抑制し、人工的な“賢者モード“をもたらしてくれる可能性を示しています。

日本では、2006年より禁煙外来への加療が保険適応となり、チャンピックスなどの禁煙補助薬が保険内で処方可能となっています。しかしながら、禁煙外来の保険適応期間は3ヶ月と限られており、3ヶ月以降は病院から離れて禁煙を継続する必要があります。この保険終了後の治療継続補助薬として、CBD製品には可能性があると言えるかもしれません。

その一方で、CBD Vapeを長期的に使用することの安全性については、確立されていないのが現状です。タバコを30年吸い続けると肺機能に影響が出る可能性が高いことは明らかとなっていますが、CBD Vapeを30年間吸い続けた人に本当に健康上の問題が生じないかどうかについては、人類には知る術がないのです。(実際に今回の治験ではVapeは使われていません。)現状では、禁煙補助の一過性の使用に留めるのが無難と言えるでしょう。
使用可能な成分についての規制は先進地域ではそれぞれ導入されていますが、国際的な基準は存在しません。今後、国内でも何らかの科学的根拠に基づいたレギュレーションが導入されることが望ましいと考えられます。

執筆:正高佑志 (医師・一般社団法人Green Zone Japan代表理事)

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