高齢者の大麻使用:ハワイの最新研究から見る実態、健康リスク、社会的背景

2026.07.11 | 安全性 海外動向 | by greenzonejapan
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高齢者の大麻使用:ハワイの最新研究から見る実態、健康リスク、社会的背景
2026.07.11 | 安全性 海外動向 | by greenzonejapan

近年、米国を中心に大麻の医療用および嗜好用(非医療用)の合法化が進む中で、50歳以上の成人における大麻使用者が急増しています。最新の推計では、50歳以上の成人の最大15%が過去1年間に大麻を使用したと報告されており、特に50〜64歳の層では65歳以上の層よりも高い使用率を示しています。

大麻に対する社会的な許容度が高まる一方で、高齢期特有の生理学的・認知的変化を考慮した健康リスクや、アルコール・ニコチンとの併用実態については、まだ十分に解明されていません。本記事では、ハワイ州の医療システム(Kaiser Permanente Hawaii)の会員を対象に行われた最新の研究論文「50歳以上の成人における大麻使用パターンとアルコール・ニコチンの併用:人口統計学的要因および医療用大麻使用による違い」に基づき、その実態を詳細に解説します。

大麻使用の現状:なぜ高齢者が手に取るのか

米国の高齢者の間では、大麻に対する「リスクの認識」が劇的に変化しています。65歳以上の成人を対象とした全国調査によると、定期的な大麻使用に伴うリスクを感じる人の割合は、2015年の53%から2019年には43%へと減少しました。

研究によると、50歳以上の成人が大麻を使用する主な目的は以下の3つに分類されます:
・医療目的のみ:25.0%
・非医療(嗜好)目的のみ:27.2%
・両方の目的:47.8%

注目すべきは、約半数のユーザーが医療と嗜好の両方の目的で使用しているという点です。医療目的で大麻を使用する高齢者の多くは、慢性疼痛、不安、抑鬱、不眠症、吐き気、関節炎などの症状緩和を報告しており、主観的な改善を実感しているケースが多いことが分かっています。しかし、これらに対する科学的根拠は、慢性疼痛や化学療法に伴う吐き気など一部の症状を除いては、依然として限定的または不十分であるのが現状です。

使用されている製品と摂取方法

大麻の消費方法は、単なる「喫煙」から多様化しています。しかし、今回のハワイの研究(367名の参加者、平均年齢65.9歳)では、依然として伝統的な方法が主流であることが浮き彫りになりました。

主な製品形態
・乾燥大麻(Flower):59.9%
・エディブル(食用製品):16.7%
・Vape(電子タバコ型):6.3%
・CBDのみの製品:6.3%
・濃縮物(Concentrates):2.9%
・外用薬(スキンケア製品):2.0%

摂取方法の実態

最も一般的な摂取方法は喫煙(56.7%)であり、次いで経口摂取(22.0%)、Vape(11.9%)、皮膚への塗布(6.1%)と続きます。興味深いことに、医療用大麻カードを保持しているユーザーであっても、その半数(50%)が主に喫煙を選択しています。

喫煙は最も即効性がある一方で、慢性気管支炎や肺の炎症などの呼吸器系疾患のリスクを高めます。一方、エディブルは肺への影響はないものの、効果が現れるまでに時間がかかるため、不慣れなユーザーが過剰摂取に陥りやすいという別のリスクを抱えています。

アルコール・ニコチンとの併用(ポリサブスタンス・ユース)

高齢者の大麻使用において最も注意すべき点の一つが、他の物質との併用です。本研究では、大麻使用者の多くがアルコールやニコチンを併用していることが明らかになりました。

・大麻とアルコールの併用:60.9%
・大麻のみ使用:29.9%
・大麻、アルコール、ニコチンの3種併用:5.6%
・大麻とニコチンの併用:3.7%

このように、ユーザーの約7割以上がアルコールを、約1割がニコチンを常用しています。アルコールの過剰摂取やビンジ・ドリンキング(短時間の多量飲酒)は高齢者の間で増加傾向にあり、大麻との併用は心血管疾患やガンのリスク、さらには認知機能への悪影響を増幅させる可能性があります。特に「ベビーブーマー世代」は、それ以前の世代に比べて薬物使用に対して寛容な傾向があり、加齢に伴う健康課題を抱えながら複数の物質を摂取する「ポリファーマシー(多剤併用)」のようなリスクに直面しています。2025年のアメリカ退役軍人を対象とした疫学調査により、アルコールと大麻の両方を常用しているユーザーでは、単独使用より自殺念慮や自殺行動のリスクが大幅に高いことが判明しています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40881133/

人種・民族による顕著な格差

この研究の大きな特徴は、ハワイという多様な人種が暮らす地域で調査が行われた点です。その結果、人種や民族によって大麻の使用パターンやアクセスに大きな違いがあることが判明しました。

白人+マルチレイシャル(多民族)人種:
・使用頻度が最も高く、過去30日間で平均20日前後使用しています。
・白人の参加者は、州の医療大麻カードを所持している割合が最も高く、正規のディスペンサリー(販売所)からのみ購入する傾向が強いことが分かりました。

先住ハワイアンおよび太平洋諸島系(NHPI)人種:
・喫煙を選択する割合が82.5%と圧倒的に高い傾向がありました。
・ニコチン(タバコ)の常用率も19%と高く、アルコール・ニコチン・大麻の3種併用を行う割合も最も高いグループでした。
・正規のディスペンサリーのみを利用する割合が低く、安全で規制された製品へのアクセスに障壁がある可能性が示唆されています。

アジア系人種:
・他のグループに比べて使用頻度が低く、大麻使用障害(CUD)の指標も低い傾向にあります。
・特徴として、CBDのみの製品を使用する割合が高く、また喫煙よりもVapeを好む傾向が見られました。これは、Vapeを「タバコよりも害が少ない」と認識する傾向があることが背景にあると考えられます。

「問題ある使用(大麻使用障害)」のリスク因子

研究では、CUDIT-R(大麻使用障害識別テスト改訂版)という指標を用いて、依存症や有害な使用実態を調査しました。その結果、参加者の約31%が「問題ある使用」に該当するカットオフスコア(9点以上)を記録しました。統計解析の結果、以下の要因が問題ある使用と強く関連していることが示されました:
・使用頻度の高さ: 使用日数が多いほど、トラブルのリスクが高まります。
・摂取方法としての喫煙: エディブルや他の方法と比較して、喫煙を主とするユーザーは問題ある使用に陥りやすい傾向があります。
男性は女性よりも喫煙を好み、使用頻度も高く、結果として「問題ある使用」のスコアが有意に高くなっていました。

高齢者が直面する特有の健康リスク
50歳以上の成人が大麻を使用する場合、若年層とは異なる健康リスクに直面します。高齢者は以下のような疾患を抱えていることが多いためです:

・心血管疾患: 高血圧や心筋梗塞のリスク。
・呼吸器疾患: COPD(慢性閉塞性肺疾患)など。
・転倒と負傷: 認知機能やバランス感覚への影響による転倒リスク。

さらに、大麻は他の処方薬との相互作用(薬物相互作用)を引き起こす可能性があり、持病を持つ高齢者にとっては、医療目的であっても医師の管理下でない使用はリスクを伴います。

まとめと提言:安全な向き合い方

大麻が社会に浸透する中で、高齢者が自分自身の健康管理のために大麻を選択するケースは今後も増え続けるでしょう。しかし、本研究が示すように、「医療用」として使用していても実態は喫煙であったり、アルコールと併用していたりするケースが少なくありません。

今後の課題と対策:

・適切なスクリーニング: 医療現場では、大麻使用だけでなく、アルコールやニコチンとの併用実態(ポリサブスタンス・ユース)を包括的に確認する必要があります。
・摂取方法の転換: 呼吸器リスクを抑えるため、喫煙以外の方法(エディブルや外用薬など)への変更を促す教育が重要です。
・アクセス格差の解消: 人種や民族による正規ディスペンサリーへのアクセスの差(コスト、場所、不信感など)を解消し、安全で検査済みの製品を誰もが利用できる環境整備が求められます。
・専門家への相談: 医療用大麻カードの取得を検討したり、既存の処方薬との飲み合わせを医師や薬剤師に相談したりすることが、過剰摂取や予期せぬ副作用を防ぐための最善策です。

大麻についても科学的なデータに基づいたリスク理解と、個人の健康状態に合わせた慎重な判断が必要です。高齢者が大麻を使用する場合、それは単なる個人の嗜好を超えて、公衆衛生上の重要なトピックとなっているのです。

出典: 本記事は、Kristina T. Phillipsらによる論文 “Cannabis Use Patterns and Co-Use of Alcohol and Nicotine in Adults Over 50 by Demographic Factors and Medical Cannabis Use” (2025) に基づいて作成されました。



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