CBDは承認外の難治てんかんにも有効か?イタリアの107名の実臨床データが明かす治療の最前線

2026.07.13 | 病気・症状別 | by greenzonejapan
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CBDは承認外の難治てんかんにも有効か?イタリアの107名の実臨床データが明かす治療の最前線
2026.07.13 | 病気・症状別 | by greenzonejapan

本記事では、2025年に学術誌『Epilepsia Open』に掲載された、難治性てんかんの一群である「発達性およびてんかん性脳症(DEE)」に対するカンナビジオール(CBD)の治療効果と安全性に関する最新の研究成果を詳しく解説します。
この研究は、イタリアの主要な医療機関において実施された大規模な実臨床(リアルワールド)データに基づいています。特に、CBDが承認されている疾患だけでなく、いわゆる「オフラベル(適応外使用)」での効果についても貴重な示唆を与えています。

研究の背景と目的
発達性てんかん性脳症(DEE)は、頻繁なてんかん発作に加えて、認知、行動、運動機能の遅滞を伴う重篤な疾患群です。これらの症状は、基礎となる原因(多くは遺伝的要因)と、てんかん活動そのものの両方によって引き起こされます。これは2017年の国際てんかん分類によって提示された概念であり、従来の大田原症候群、West症候群、Dravet症候群、Lennox-Gastaut症候群などを包括含有する疾患概念となります。
CBD製剤(商品名:エピディオレックス)は、米国FDAや欧州EMAにおいて、ドラベ症候群(DS)、レノックス・ガストー症候群(LGS)、および結節性硬化症(TSC)に伴うてんかん発作の併用療法として承認されています。しかし、それ以外のDEE疾患におけるCBDの役割については、まだ十分に解明されていません。
本研究の目的は、広範なDEE患者コホートを対象に、CBDの実臨床における使用状況、有効性、安全性、そして非発作項目(覚醒度や睡眠など)への影響を評価することにあります。

著者らの所属と研究実施国
本研究はイタリアの2つの主要なてんかんセンターで実施されました。
主要な著者らと、その所属は以下の通りです:
ローマのグループ(Fondazione Policlinico Universitario A. Gemelli IRCCS / Università Cattolica del Sacro Cuore)Marco Perulli、Maddalena Bianchetti、Michela Quintiliani、Maria Luigia Gambardella、Maria Picilli、Domenica Immacolata Battaglia
アンコーナのグループ(Child Neurology and Psychiatric Unit, Pediatric Hospital G. Salesi, Azienda Ospedaliero-Universitaria Delle Marche)Gloria Pantalone、Carla Marini、Elisabetta Cesaroni
このように、イタリアを代表する大学病院および小児専門病院の専門家らによって共同で研究が行われました。

研究の方法:患者のエンロールとデータ収集
本研究は、後ろ向きの観察研究として設計されました。

患者のエンロール(登録)方法
対象期間と場所: 2020年1月から2024年2月までの間に、ローマのGemelli病院とアンコーナのSalesi小児病院において、高純度CBD製剤を処方されたすべての連続したDEE患者が対象となりました。

選択基準: CBDを少なくとも3ヶ月以上連続して服用した患者に限定されました。
オンラベルとオフラベル: 承認済みの疾患(LGS、DS、TSC)だけでなく、それ以外のDEE(オフラベル使用)の患者も含まれています。
同意と倫理: 研究は各施設の倫理委員会の承認を受け、すべての参加者(またはその保護者)からインフォームド・コンセントを得て実施されました。

評価項目
有効性: ベースラインからの発作頻度の減少率が50%以上(50%レスポンダー)および75%以上(75%レスポンダー)であることと定義されました。
安全性: CBDの継続率および副作用の発生率を評価しました。
非発作項目: 介護者からの報告に基づき、覚醒度、睡眠の質、運動能力などの改善を記録しました。

対象患者の特性
合計107名の患者が解析対象となりました。
性別: 女性が61名(57%)。
年齢: CBD開始時の年齢中央値は12.8歳。
診断の内訳:
レノックス・ガストー症候群(LGS): 55.1%
ドラベ症候群(DS): 16.8%
結節性硬化症(TSC): 8.4%
その他のDEE(オフラベル): 19.6%

原因(病因): 56.1%が遺伝性で、主な原因遺伝子としてSCN1ACDKL5TSC1/2などが挙げられています。
以前の治療: CBD開始前に試みられた抗てんかん薬(ASM)の数の中央値は7剤で、非常に治療抵抗性の高いグループであることがわかります。

研究の結果:CBDの驚くべき効果
追跡期間の中央値20ヶ月において、以下の結果が得られました。

発作減少の有効性
全体: 最終フォローアップ時点で、69%の患者が50%以上の発作減少を達成し、さらに21.1%が75%以上の減少を達成しました。
疾患別の傾向: TSC、LGS、およびオフラベルのDEE群では高い有効性が示されましたが、意外なことにドラベ症候群(DS)の患者は他のグループと比較してレスポンダー率が低い(最終フォローアップで22%)という結果になりました。
原因別の傾向: 遺伝性または原因不明の症例は、構造的(脳の形態異常など)または感染性の原因による症例よりも良好な反応を示しました(p=0.011)。

抗てんかん薬との相互作用
本研究で最も注目すべき発見の一つは、併用薬との関係です。
バルプロ酸(VPA)との組み合わせ: バルプロ酸を併用していない患者の反応率は86.7%であったのに対し、併用している患者では58.4%にとどまりました。統計的にも、バルプロ酸の併用はCBDの有効性を低下させる負の予測因子であることが示唆されました(p=0.006)。
クロバザム(CLB)との組み合わせ: 他の研究ではクロバザムとの相互作用が強調されることが多いですが、本研究ではクロバザムの有無は有効性や安全性に大きな影響を与えませんでした。

非発作項目の改善
CBDは発作を減らすだけでなく、生活の質にも寄与しました。
覚醒度・行動の改善: 56.3%の介護者が報告。
睡眠の質の向上: 25.4%が報告。
運動能力の向上: 14.1%が報告。

安全性と忍容性
CBDは概して良好な忍容性を示しました。
副作用の発生率: 33.6%に副作用が見られましたが、そのほとんどは軽度で一過性のものでした。
主な副作用: 下痢、傾眠、イライラ、不安、肝酵素(トランスアミナーゼ)の上昇など。
治療中止: 副作用のために治療を中止したのは全体の9%に過ぎませんでした。

考察と結論
このイタリアの研究は、実臨床においてCBDがDEE患者に幅広く有効であることを裏付けました。

重要なポイントのまとめ
オフラベル使用の有用性: 承認されているLGS、DS、TSC以外のDEE患者においても、CBDは既存の承認疾患と同等の有効性と安全性を示しました。これは、CBDの適応拡大を支持する強力なデータです。
遺伝性DEEへの期待: 遺伝的原因が特定されている症例、特にTSCやLGSにおいてCBDは非常に有望な治療肢となります。
バルプロ酸との相互作用: 著者らは、バルプロ酸がCBDの抗てんかん効果を減弱させる可能性を指摘しています。これは薬物動態学的な相互作用というよりも、ミトコンドリア機能や神経伝達物質系への影響など、複雑なメカニズムが関与している可能性があり、今後の研究課題です。
「発作以外」への恩恵: 家族が実感する「覚醒度の向上」などのメリットは、患者の日常生活において非常に重要です。

結論
本研究は、CBDがDEE患者にとって効果的かつ安全な治療オプションであり、特に承認外の疾患群に対しても治療の可能性を広げるものであると結論づけています。イタリアの専門家らは、今回の発見を検証し、疾患の原因ごとの反応の違いをより深く理解するために、さらなる前向きな研究が必要であると述べています。

出典: Perulli M, et al. Real-world efficacy and safety of cannabidiol in developmental and epileptic encephalopathies. Epilepsia Open. 2025;10:1806–1813.

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