米国高校生の大麻使用は減少傾向&男女が逆転

2026.07.29 | 海外動向 | by greenzonejapan
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米国高校生の大麻使用は減少傾向&男女が逆転
2026.07.29 | 海外動向 | by greenzonejapan
インフォグラフィックス

大麻の合法化が全米で進む中、若者の大麻使用はどのように変化しているのでしょうか。多くの人が「合法化が進めば若者の使用も増えるのではないか」という懸念を抱くかもしれません。しかし、1991年から2023年にかけての米国高校生を対象とした大規模調査の結果は、こうした単純な予想とは異なる、複雑で興味深い実態を示しています。

米国の研究者Stephen M. Amrock氏とAgata J. Sajkiewicz氏による最新の研究は、30年以上にわたる米国高校生の大麻使用トレンドを詳細に分析し、2026年に学術誌Addictive Behaviorsに発表されました(Amrock & Sajkiewicz, 2026)。この研究では、生涯使用率が1999年の47.3%から2023年には30.1%まで低下したことが示される一方、これまで男性の方が高かった使用率が、直近では女性の方が上回るという性別構成の逆転現象が確認されました。

研究の背景:なぜ若者の大麻使用トレンドを追う必要があるのか

大麻は依然として青少年の健康における重要な懸念事項です。脳の発達段階にある思春期における大麻使用は、成人期の使用とは異なるリスクを伴う可能性が指摘されており、公衆衛生の観点から継続的なモニタリングが求められています。

特に近年は、米国内で医療大麻や嗜好用大麻の合法化が州単位で急速に進んでおり、若者を取り巻く大麻へのアクセスや社会的認識も大きく変化してきました。こうした環境変化の中で、実際に若者の使用実態がどう推移しているのか、また性別や人種・民族といった人口統計学的な下位集団によって影響の受け方に違いがあるのかを把握することは、効果的な公衆衛生政策の立案に不可欠です。

研究方法:30年以上にわたる全国調査データの分析

この研究では、1991年から2023年までのYouth Risk Behavior Survey(YRBS、青少年危険行動調査)のデータが用いられました。YRBSは米国の高校生を代表する、学校を基盤とした隔年実施の調査であり、米国疾病予防管理センター(CDC)が主導する大規模な公衆衛生モニタリングシステムの一部です。

研究チームは、クロス集計とロジスティック回帰モデルを用いて、生涯大麻使用(lifetime use)、直近の使用(recent use、主に過去30日以内の使用を指すと考えられます)、そして早期使用開始(early-age initiation、若年での大麻使用開始)という3つの指標を分析しました。さらに、これらのトレンドが性別および人種・民族によってどのように異なるかについても詳細に検討されています。

結果:逆U字型のトレンドと性別逆転という2つの発見

分析の結果、人口統計学的な違いを超えて、米国高校生の大麻使用率は概ね類似した逆U字型のパターンをたどっていることが明らかになりました。具体的には、1999年に使用率がピークに達し、その後減少に転じるという傾向が、多くの下位集団で共通して観察されています。

生涯大麻使用率については、1999年の47.3%(95%信頼区間44.5-50.2%)から2023年には30.1%(同27.8-32.3%)へと大きく減少しました。直近の使用率も同様に、1999年の27.1%(同24.6-29.6%)から2023年の17.8%(同16.2-19.4%)へと低下しています。さらに、早期使用開始率についても、1999年の11.5%(同9.7-13.3%)から2023年には6.5%(同4.7-8.4%)へとほぼ半減しました。

この研究で特に注目すべき発見は、性別による使用率の顕著な逆転です。これまでの調査では一貫して男性の方が高い使用率を報告してきましたが、2023年のデータでは状況が一変していました。生涯使用率については女性が33.4%であるのに対し男性は27.0%、直近の使用率についても女性が19.4%であるのに対し男性は16.4%と、いずれの指標においても女性の方が男性を上回るという結果になったのです。

人種・民族による違いについては、一貫した傾向が持続していることも確認されました。アジア系の生徒は一貫して他のグループよりも低い使用率を報告している一方、非ヒスパニック系黒人およびヒスパニック系の生徒は、ほとんどの指標において比較的高い使用率を示していました。

考察・意義:何がこの変化を生み出したのか

この研究が示す最も重要なメッセージは、1990年代を通じて上昇した大麻使用率が1999年前後にピークを迎え、その後減少に転じたという長期的なトレンドです。全体としては、若者の大麻使用は懸念されるほど急激に増加しているわけではなく、むしろ数十年単位で見れば減少傾向にあると言えます。

一方で、性別構成の逆転という現象は、単なる数値の変化以上の意味を持つ可能性があります。従来、大麻を含む物質使用は男性優位とされてきましたが、今回の結果はこの前提が過去のものになりつつあることを示唆しています。著者らは、この性別の収斂(convergence)が人種・民族グループを超えて頑健に観察されると指摘しており、単一の下位集団に限定された現象ではないことを強調しています。

なぜこのような性別逆転が生じたのかについて、本研究のアブストラクトからは明確な因果メカニズムは示されていません。ストレスやメンタルヘルスの問題、社会的なジェンダー規範の変化、ソーシャルメディアの影響など、さまざまな要因が考えられますが、これらはあくまで仮説であり、今後のさらなる研究が必要とされる領域です。著者ら自身も「further study(さらなる研究)に値する」と明言しており、本研究はあくまで現象の記述にとどまるものであることに留意すべきです。

また、人種・民族による差異が持続している点についても、単純な生物学的要因ではなく、社会経済的環境やアクセスのしやすさ、地域における大麻政策の違いなど、複合的な要因が背景にある可能性が考えられます。この点についても、本研究だけでは因果関係を特定することはできません。

まとめ

今回紹介した研究は、1991年から2023年までの30年以上にわたる米国高校生の大麻使用トレンドを包括的に示すものです。全体的な使用率は1999年をピークに着実に減少してきた一方で、性別による使用パターンには大きな変化が生じており、現在では女性の方が男性よりも高い使用率を示しているという事実は、今後の若者向け大麻対策や予防教育のあり方を考える上で重要な示唆を与えます。

本記事の内容はあくまで研究結果の紹介であり、医学的・法的なアドバイスを提供するものではありません。大麻をめぐる社会状況は国や地域によって大きく異なるため、日本国内における政策や教育のあり方を検討する際には、こうした海外の研究知見を参考にしつつも、日本独自の文脈を踏まえた慎重な議論が求められます。

参考文献

Amrock, S. M., & Sajkiewicz, A. J. (2026). Trends in US adolescent cannabis use, 1991-2023. Addictive Behaviors. DOI: 10.1016/j.addbeh.2026.108634
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41666574/

正高佑志

執筆者: 正高佑志 Yuji Masataka(医師)
経歴: 2012年医師免許取得。2017-2019年熊本大学脳神経内科学教室所属。2025年聖マリアンナ医科大学・臨床登録医。
研究分野:臨床カンナビノイド医学
活動: 2017年に一般社団法人Green Zone Japanを設立し代表理事に就任。独自の研究と啓発活動を継続している。令和6年度厚生労働特別研究班(カンナビノイド医薬品と製品の薬事監視)分担研究者。
書籍: お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社)、CBDの教科書(ビオマガジン)
所属学会: 日本内科学会、日本臨床カンナビノイド学会(副理事長)、日本てんかん学会(評議員)、日本アルコールアディクション医学会(評議員)
更新日:2026年7月21日

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