令和6年度厚生労働科学特別研究事業「カンナビノイド医薬品とカンナビノイド製品の薬事監視」の一環として、厚労省が定める「先進6カ国」のうち、国として医療大麻制度を運用している4カ国について、4回のシリーズでお伝えしました。今回は、国としての医療大麻制度を持たないアメリカとフランスの 2025年3月時点での状況をお伝えします。
先進6カ国の医療大麻制度 [ 1 ] カナダ
先進6カ国の医療大麻制度 [ 2 ] オーストラリア
先進6カ国の医療大麻制度 [ 3 ] イギリス
先進6カ国の医療大麻制度 [ 4 ] ドイツ
研究要旨 【目的】厚生労働省の定める先進6カ国(アメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリス・ドイツ・フランス)のうち、処方箋医薬品として認可されていない大麻製剤を医師が患者に処方することが合法である国について、その制度設計および処方の実態を調査し、日本における制度設計の際の参考とする。 【方法】市場調査会社が公表しているデータ、および各国の業界関係者に聞き取りを行った。イギリスについては実際に足を運び、関係者に話を伺った。 【結果】現在、未承認大麻製剤が合法的に処方されているのは、上述の6カ国のうち、カナダ・オーストラリア・イギリス・ドイツの4カ国である。各国の制度の詳細については本文にて詳述する。 【考察】各国で制度は異なるが、処方箋医薬品でもなく健康補助食品でもない「医療用大麻製剤」というカテゴリーが存在し、医療関係者の合法的な処方のもとに使用している患者がいるという事実は共通している。本邦においても、同様の大麻製剤の使用が認められることによって恩恵を得られる潜在的な患者は多数にのぼると考えられ、日本の医療制度や患者の実情に則した制度が制定されることが望ましい。
アメリカの医療大麻制度
アメリカには連邦法と各州の州法とが二重構造で存在し、連邦法が州法より優先される。大麻は連邦法である規制物質法(Controlled Substances Act)(1) ではスケジュール1に分類される違法薬物であり、医療的な用途は認められていないが、一部の州では合法化されている。この場合、理論上は連邦法が優先するが、実際には連邦政府が州の大麻政策を黙認している。医療大麻運用制度は各州政府に委ねられ、2025年3月現在、アメリカでは、39州およびワシントンDC、アメリカの領土であるグアム、バージン諸島、プエルトリコが医療大麻制度を運用している。適応症や許可の種類など、運用規則は各州によって異なるが、すべてに共通して、医師が医療用大麻製剤を処方することはなく、効果効能を謳うことも許されていない。
※ ただし例外として下記がある。
アメリカでは、Investigational New Drug(IND)申請を受諾する形で、未承認薬への拡大アクセスの制度を運用してきた歴史があり、現在、食品医薬品局(FDA)は正式には “Expanded Access” と称して制度の運用を行なっている (2) (3)。医療用大麻製剤もこの対象として1976年から1991年までに約30名の患者が連邦政府による医療用大麻製剤を支給されていた。1992年以降、医療用大麻利用制度の運営は連邦政府から州政府に移管され、以降 Expanded Access への新規の登録は行われていないが、今も連邦政府から薬として大麻製剤の提供を受け続けている患者が1名のみ存在する (4)。
大麻は AHP (American Herbal Pharmacopeia) には 1850年から収載され、1942年にいったん削除されたが、2014年に再掲された (5)。
※ 2026年4月23日にアメリカで医療大麻がスケジュール III に変更されましたが、これはアメリカが国家として医療大麻制度を運用するということではなく、アメリカでは依然として医療大麻制度の運用は各州が担っています。
フランスの医療大麻制度
2025年4月現在、フランスには医療大麻制度は存在しない。
2021年3月、医療用大麻の合法化に向け、その効果と安全性を評価するための試験プログラムが、国家医薬品安全庁(ANSM)によって開始された。これは難治性てんかん、化学療法による悪心および嘔吐、神経痛(特に多発性硬化症や他の神経変性疾患に関連する痛み)、線維筋痛症やその他の慢性痛、パーキンソン病やその他の神経障害などの疾患を持つ 3,000人を対象としたものである。当初2年間と期間設定されていたプログラムは、その後何度か延長され、2024年12月末で終了した。
試験プログラムでは、カンナビジオール(CBD)とテトラヒドロカンナビノール(THC)の比率が異なる、オイル、カプセル、ドライフラワーなどの剤形を含む複数の製品が使用された。
試験プログラムの結果を受け、フランス政府は 2025年3月19日、医療大麻制度の法的枠組みの草案を欧州委員会に提出し、医療大麻制度制定に向けて動き出している (6) (7)。
文責:三木直子(国際基督教大学教養学部語学科卒。翻訳家。2011年に『マリファナはなぜ非合法なのか?』の翻訳を手がけて以来医療大麻に関する啓蒙活動を始め、海外の医療大麻に関する取材と情報発信を続けている。GREEN ZONE JAPAN 共同創設者、プログラム・ディレクター。)
<参照文献>
1) DEA. The Controlled Substances Act (n.d.) <https://www.dea.gov/drug-information/csa> Accessed March 2025.
2) 宮路天平. 米国における CU 制度の運用 〜Medical Cannabis を事例に〜 (2018). <https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpe/23/Supplement/23_s43/_pdf> Accessed March 2025.
3) Expanded Access. U.S. Food & Drug Administration (n.d.) <https://www.fda.gov/news-events/public-health-focus/expanded-access> Accessed March 2025.
4) Project CBD. メアリー・ジェーンからスペシャルKへ (2023-09-12). <https://projectcbd.org/ja/health/mmj-special-k/> Accessed March 2025.
5 ) American Herbal Pharmacopeia (2014). Cannabis Inflorescence Quality Control Monograph. <https://herbal-ahp.org/online-ordering-cannabis-inflorescence-qc-monograph/> Accessed March 2025.
6) Ministère du Travail, de la Santé, des Solidarités et des Familles. Notification of texts governing the use of medical cannabis to the European Commission: a new step for access to treatment in France (2025-03-20). <https://sante.gouv.fr/actualites/presse/communiques-de-presse/article/notification-des-textes-encadrant-l-usage-du-cannabis-medical-a-la-commission> Accessed April 2025.
7) Hoyng Rokh Monegier. Medical Cannabis Update: France officially notified the projects of regulatory texts to the European Commission! (2025-03-20). <https://www.hoyngrokhmonegier.com/news-insights/medical-cannabis-update-france-just-officially-notified-the-projects-of-regulatory-texts-to-the-european-commission> Accessed April 2025.
文責:三木直子(国際基督教大学教養学部語学科卒。翻訳家。2011年に『マリファナはなぜ非合法なのか?』の翻訳を手がけて以来医療大麻に関する啓蒙活動を始め、海外の医療大麻に関する取材と情報発信を続けている。GREEN ZONE JAPAN 共同創設者、プログラム・ディレクター。)
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